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【第23回】
ライフステージでかわる旅のカタチ
[ ファミリートラベル ] 国内ファミリー旅行 人気の潮流・新たなトレンド
- 夏休みや春休み、そして年末年始に需要が増す家族旅行。ライフステージにおけるファミリートラベルの実行時期は、受験期、思春期などお子さんの成長に大きく左右されるため、意外や、その期間は短いものです。だからこそ家族の絆を大切に、お子さんが一緒に旅ができるときに、数多くの体験を積ませてやりたいのが親心でしょう。国内ファミリー旅行のトレンドと、人気の潮流を探ります。
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キーワードは「交流」と「体験」
家族の絆づくりに旅の価値を見直そう
- 物見遊山型の旅で誰もが経験したのは、ヨーロッパなどの都市周遊型の旅ではないでしょうか。団体旅行が全盛だった1980年代後半から90年代前半にかけて定番だった「ロン・パリ・ローマ」(イギリス・ロンドン、フランス・パリ、イタリア・ローマの各都市を巡る旅)も、時代の変遷とともにアジア周遊などへと目的地の人気が移ろいました。それでも歴史と伝統の薫風に満ちた欧州へ旅するとき、今の時代も、周遊旅は廃れることなく人気です。
- 経済が成熟した欧米先進各国では、一カ所滞在型の旅スタイルが主流を占めます。バカンスもしくはバケーションという概念は、半世紀以上を経て欧米で醸成されました。やがて90年代半ばごろから、日本でもさかんに叫ばれるようになりましたが、欧米と日本との休暇制度の違いは顕著です。アクティブシニアを中心に、定年後の旅の在り方の一つに注目されたロングステイも、現役世代にとっては高嶺の花と捉えられてきました。とはいえ近年、徐々にではありますが、リピーターを中心とした現役世代の滞在型旅行が萌芽のときを迎えています。
- 避暑や避寒を目的に、ある一時期、違った地域を選んで滞在する手法は、東日本大震災の直後から、節電や避「難」を目的とするファミリー層が現出したのも事実です。私たちは生き抜く知恵の一つに、暮らしのなかに滞在型旅行を取り入れるようになっています。
- 一カ所に滞在しながらの観光行動に求められるのは、「交流」と「体験」です。どのような交流体験ができるかは、地域の側でなくては具体的なメニューを出しづらく、そのうえで「着地型旅行商品」として開発されるものも珍しくありません。地元の人たちの“当たり前”を観光資源にすることで、旅人は非日常を感じつつも、温かい人との交流や希少な体験を得ることができるのです。

香港を旅游する大陸からの中国人観光客たちはポロシャツやサングラスに“記号”を欠かさない
- 新潟・佐渡での能体験や青森・五所川原での津軽三味線体験は、当地へ赴いたからこその趣ある体験です。農漁村での交流体験やエコツーリズムもまた、都会に暮らす人にとって貴重な体験といえましょう。小さなお子さんから大人まで、家族の絆を再発見するにはもってこいなのが、交流であり体験です。この二つは、鞄の開け閉めに忙しい周遊型の旅では、なかなか見出すことができません。
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記号消費からの決別 旅の思い出を写真に収める
- 海外への物見遊山の旅で、バブル期に世界から揶揄されたのが日本人の一流ブランドの買いあさりでした。高級品を扱うパリやローマの本店前には、一流ブランドを手にしようと学生からビジネスマンまで多くの日本人が、開店前から行列をなしたことを記憶する人も少なくないでしょう。
- しかし時代を俯瞰すれば、これらブティックの売り場をまさに今、席巻するのは、中国をはじめとする新興国、中東産油国の富裕層、準富裕層、そして中間層の人たちです。成功を一目で示すことができるモノグラム。こうした記号消費の波も、もはや日本人にとって、ボリュームゾーンからは引き潮にあります。
- 東日本大震災で得た教訓の一つに、形あるもののはかなさ、無常さがありました。遺族の一人となった自身もまた、家主なきヘドロまみれの家を目にしたとき、高価な着物も掛け軸も、一瞬にして何ら価値がなくなったことを痛感したものです。
- 探し出して持ち帰ったものといえば、思い出がつまったアルバムです。
- アルバムには、数多くの旅先での写真が年代ごとに貼られていました。旅はカタチないものです。そして家族の絆とは、形骸はないものの価値ある大切なものなのです。私たち日本人は経済成熟のなかで、身近なこと、日常のなかに、真の価値を発見しようとしています。旅もまた、限りなく日常に近いスタイルや、その土地の“当たり前”が求められているのです。
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超・安近短のアウトレットから国内ロングステイまで
ライフステージにあったファミリー旅行を
- 国内ファミリー旅行のトレンドは、「超・安近短」と「プチ滞在型」の二極化が、近ごろ顕在化しています。
- 安くて近場、期間は短くの安近短(あん・きん・たん)傾向も、宿泊を伴わない日帰りレジャーが主流となり、日本人の平均宿泊数はここ数年、微減傾向にあります(図表参照)。郊外や観光地に立地するアウトレットやスーパー銭湯、温泉観光地での0泊2食など、日帰りレジャーする人が増えているのが理由にあります。そのためウルトラを意味する文字を冠して、「超・安近短」傾向と呼ばれています。
日本人の国内宿泊観光旅行の回数・宿泊数
出所:平成22年度版観光白書
- その反面、プチ滞在型の旅も注目されています。連泊や素泊まり料金を用意する旅館、キッチン付きの滞在施設が増えていることが背景にあります。一カ所に滞在しながら、ゆったりと観光地を巡る。そうした人たちの宿泊施設における一人当たりの客単価は低減しますが、周辺地域における経済波及効果は推して知るべしの調査結果もあります。そこで一カ月や二カ月という長期ではなく、数泊連泊型のプチ滞在を商品化する旅行会社が増えています。
- 誰もがお仕着せではない、自分らしい旅をデザインしたいと考えます。とりわけファミリー旅行は、それぞれの興味・好奇心、目的を一にした、最小単位の団体行動です。ですから、旅のオーガナイザーである親の知恵が試されます。
- 親である私たち現役世代が、かつて経験したバブル期の記号消費や物見遊山の旅から一歩、深化して、癒しや小さな感動や思い出づくりを欲しているのが見てとれます。旅は非日常を求めるものとよく言われてきましたが、はてしなく日常に近似値なもの―――アウトレットのような非日常空間でのショッピング、自炊機能がある滞在施設での連泊、ご当地グルメのような地元の大衆食等々―――が求められているのです。
- 旅も暮らしも「日常」のなかに、本当の幸せがあるのだと知らされます。
- 執筆:千葉千枝子
掲載日:2012年月1月6日
- 千葉千枝子(ちば ちえこ)
- 観光ジャーナリスト。東京成徳短期大学・城西国際大学 観光学講師。岩手県釜石市生まれ。中央大学卒業後、富士銀行、シティバンクを経てJTB へ入社。96年、有限会社千葉千枝子事務所を設立。旅と金融をテーマに、運輸・観光業全般の論評、執筆・講演活動を行う。2011年の東日本大震災で祖父ら親族を津波で失う。
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