特集・コラム [ マネーセミナー体験記 ]

ディナポリセミナー “フィボナッチ売買法” ディナポリセミナー “フィボナッチ売買法”

「マネーセミナー体験記」の第8回目は、オリックス証券が10月13日に開催した「ディナポリセミナー“フィボナッチ売買法”」です。チャートを使ったテクニカル分析の手法にはローソク足や移動平均線などたくさんありますが、なかでも「フィボナッチ」は13世紀にイタリアの数学者フィボナッチが編み出したものとして良く知られています。そのフィボナッチに詳しい、テクニカル分析の専門家であるジョー・ディナポリ氏から実際のトレーディングでの活用法を学ぼうと、会場に集まった個人投資家は熱心に聞き入っていました。

 

個人向けでは珍しい、海外の専門家の有料セミナー

写真1 講演するジョー・ディナポリ氏
写真1 講演するジョー・ディナポリ氏
オリックス証券が13日、東京都千代田区の東京国際フォーラムで「ディナポリセミナー“フィボナッチ売買法”」のセミナーを開催しました。同社が海外から講師を招いてセミナーを開くのは初めてです。トレーダーとして38年以上の経験を持ち、テクニカル分析の専門家でもあるディナポリ氏の話を聞こうと、当日は受講費2万5000円の有料セミナーにも関わらず27名の個人投資家が参加しました【写真1】。
ディナポリ氏は現在、米フロリダ州サラソタにあるコースト・インベストメント・ソフトウエア社の社長を務めながら、普段のトレーディングはタイのバンコクで行っているそうです。最近は簡単なタイ語も話せるようになったそうで、「タイや日本、アジアが大好きです」(同)と、日本の個人投資家にも同時通訳を介して自分の経験・テクニカル分析を熱心に伝授していました。
 

テクニカルの前に、「6つ」の成功の秘訣を確認

セミナーの冒頭、ディナポリ氏はよりよい投資をするために確認したい6つの問題を指摘しました【表参照】。テクニカル分析のセミナーではありますが、投資できちんと利益を上げられるようにするためには「投資の基本、プランなどをしっかりと持つべきです」(ディナポリ氏)というのです。
表であげたものは個人投資家に限らず、プロでも失敗した時に思い当たる問題の数々かと思いますが、これらのことにきちんと対処すれば勝率は上がるというわけです。「40年近いトレーディングの経験で学んだことは、100%勝てることはないということです」(同)。
表 多くの投資家が持つ「6つの問題」
No 問題 ポイントとアドバイス
(1) 逆指し値の濫用 どこに注文を置くべきか分かっていない。逆にヘッジファンドなどにストップロスを仕掛けられる
(2) 時間枠という概念がない 自分の取引に合わせて時間足、日足、年足などを使い分ける
(3) 期間という概念がない 3時間、3日間といった具合に、その取引を手仕舞う期間を決めていない。プロは損をしても、翌日から新たな気持ちで取引に臨むことができる。
(4) 保合放れでの取引開始 一定のレンジ内で取引が続き、保合から放れると値動きが大きくなる局面は多いが、余り取引はお勧めできない。
(5) 理論的に利益目標を決めない いまの市場環境は変動が激しいため、きちんと利益目標を決めておかないと利益をあげにくい。
(6) 資金の限界を定めない 投資に失敗して2%程度の損失に止めようとするなら、ストップロスも正しい価格に、正しい量でおかなければならない。
セミナー資料よりQUICK作成
テクニカル分析のセミナーというと、どうしてもチャートの見方に関心が集中します。しかし、改めて投資の基本を押さえておくことは、トレーディング経験を踏まえているディナポリ氏ならではのアドバイスで勉強になります。「投資経験が余りない時にはテクニカル分析だけに頼らないで下さい。トレーディングに当たっては、その銘柄などに投資する事を決めた背景(コンテクスト)が大事です」(同)。
こうした投資の基本やテクニカル分析を駆使して、勝率7〜8割に持って行ければ成功のチャンスはあります。「逆に7〜8割にならないようなら、何かが間違っていますからそこを改めて下さい」(同)ということです。

 

フィボナッチの重要数列、「0.382」と「0.618」を知る

次はフィボナッチを使った分析です。簡単に説明すると、フィボナッチ数列とは「1、1、2、3、5、8、13、21・・・」という数列のことで、これは最初の2つを除き、ある数字を導き出すには前の数字と、その前の数字を足せば良いことが分かります【図1の下の部分参照】。

図1 フィボナッチ数列の計算方法
図1 フィボナッチ数列の計算方法

どの数も上位の数に対して0.618倍、どの数も2つ上位の数に対して0.382倍といった特徴があり、フィボナッチ数列の隣同士の数の和はだんだんと限りなく「5:8」の比率で表される黄金比に近くなります【図1の上の部分を参照】。人間の顔のかたちや自然界の植物・動物に黄金比が多いように、相場の世界でもフィボナッチの重要な比率である0.382、0.618に当てはまるケースはよくあります。ここを計算して、戻り売りや押し目買いのポイントとして使うというわけです。
この他にも0.146、0.236などがありますが、ディナポリ氏の考えでは「私は代表的な数字として、0.382と0.618、1.000と1.618があれば十分だと思います」とのこと。実戦で高値からの押し目買いの水準を判断したり、安値からの戻り売りを仕掛ける時には0.382と0.618を駆使すれば良いようです。
 

いざ実践、マンションの購入費を浮かせた成功例も

図2 タイ・バーツの対ドル相場
図2 タイ・バーツの対ドル相場
青線はそれぞれの高値からの戻し幅の0.618倍、赤線は0.382倍の水準を表す。チャートは2002年10月から2004年6月まで。 ActiveManagerよりQUICK作成
ディナポリ氏は実際の活用例として、2002年末から2004年にかけてのタイ・バーツをあげました【図2参照】。チャートを見て分かる通り、ドルが全面安の当時、タイ・バーツ相場も1年間で1ドル=44バーツ台から38バーツ台まで、12%ほどバーツ高が進みました。この2004年の始め、ディナポリ氏はタイでマンションの購入を考えていたとのこと。頭金を払い、残りはバーツ安が進んだところで現金で一括払いすると業者と掛け合ったそうで、2004年半ばに40バーツ後半まで戻したところで支払い、3万ドル(約324万円)を節約できたそうです。「皆さんも相場の読みが当たれば、マンションの頭金くらいは節約できます」(同)。
ここで大事なのは、なぜディナポリ氏が40バーツ後半で支払うかを決めたことです。チャートを見ると、40.70バーツの水準は42.07バーツからの下落幅の0.618倍と、44.15バーツからの下落幅の0.382倍が近いことが分かります。フィボナッチ分析の考え方では、0.382倍の節目を抜ければ0.618倍まで戻すと予想できますが、42.07バーツからの短期的な戻しは達成したものの、44.15バーツからの長期的な戻しの水準が重なっていたため、いったんは上昇一服が見込まれるというわけです。「チャートポイントが重なった水準を探すのが大事です」(同)。

 

ストーリーとテクニカルを組み合わせ、効果的な活用を

この日のセミナーはオリックス証券が外国為替証拠金取引(FX)の実戦で役立ててもらおうと企画したものですが、フィボナッチ分析自体は株の個別銘柄はもとより、株価指数、商品先物など、いろいろな投資で活用できます。「オリックス証券のソフトを使えばより簡単にフィボナッチ分析ができますので、個別の材料や相場観に基づくストーリー戦略と、テクニカル分析を合わせて使ってください」(同)とのこと【写真2】。
写真2 オリックス証券のソフトウェアを使えば簡単にチャートが書けるそうです。
写真2 オリックス証券のソフトウェアを使えば簡単にチャートが書けるそうです。
なお質疑応答では、個人投資家から「0.382倍と0.618倍が近い場所というのはどうやって探すのでしょうか?」という質問がありました。ディナポリ氏は「5分足などの短期間の相場では0.382倍と0.618倍が非常に近いところに現れますが、年足など、長期の分析ではずれることがあります」と回答。自分の取引期間に合わせ、「ずれ」を踏まえて投資すると良いようです。
その一方、別の参加者からは「価格の戻しや押し目の判断には役立ちそうですが、相場のトレンドが続く時間についてはどう分析すれば良いのでしょうか?」という質問も寄せられました。フィボナッチの考え方では、「日柄」についても「1、1、2、3、5、8、13、21・・・」というフィボナッチ数列を使い、天井や底入れ時期を探る手法もあるのですが、「私は時間の概念については研究していません」(同)というのです。
とはいえ、実戦に基づく売買注文の仕方などは大変勉強になりました。いままでチャートを余り使わなかった人も、利食いや損切りの水準を決める時などに活用してみると良いのではないでしょうか。


【執筆:MoneyLife 片平正二】
掲載日:2007年10月18日



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