特集・コラム [ マネーセミナー体験記 ]

外為どっとコム主催「世界と日本の経済と市場展望」 〜ドイツ証券・武者氏「日本株は有望」〜 外為どっとコム主催「世界と日本の経済と市場展望」 〜ドイツ証券・武者氏「日本株は有望」〜

「マネーセミナー体験記」の第12回目は、外為どっとコムが12月10日に東京・東新橋の本社で開催した「世界と日本の経済と市場展望」です。講師にドイツ証券の武者陵司副会長兼チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)を招き、2008年の経済を占おうという企画です。日米経済の専門的な分析を交えながら、「日本の金融市場は『四重安』に見舞われていますが、サプライズな展開があるとすればアップサイド(上方向)です!」という武者氏の予想に、参加者も熱心に聞き入っていました。

 

本社スタジオで様々なセミナーを開催

 
写真1 外為どっとコム1Fにあるブルースタジオ
写真1 外為どっとコム1Fにあるブルースタジオ。幅5.0m×高さ1.5mの国内最大規模の為替レートボードが「1ドル=111.77円」を表示しています。
外為どっとコムは、外国為替証拠金取引(FX)の業界最大手です。セミナーも為替トレーディングの仕方から、マクロ経済、テクニカル分析など様々な内容のものを開催しており、今回のセミナーは同社に口座を持っていなくても参加できました。
会場は本社の情報発信スペース「ブルースタジオ」で、入り口にある為替レートの巨大ボードが来場者を出迎えてくれます【写真1】。今年9月に1階に移設し、セミナーの模様をインターネットにてリアルタイムで放送できるなど設備もリニューアル。今回のセミナーには会場に46名、インターネットで555名が参加しました。
 

外れた原因を振り返りつつ、サブプライム問題からスタート

 
写真2 講演中の武者陵司ドイツ証券副会長兼CIO
写真2 講演中の武者陵司ドイツ証券副会長兼CIO
講師の武者氏は、証券会社でアナリストや株式ストラテジストとして30年以上の経験を持つ大ベテランです。従来は「株安・ドル安」の相場観を持つ「弱気派」として知られましたが、2004年3月に「強気派」に転じてからも独自の世界観に基づいた分析に定評があります。
講演の冒頭は、「今年は日経平均が2万円を超えると予想し、外れました。外れた原因はサブプライム問題で、なぜ外れたのかを振り返る必要があります」と反省の弁から始まりました【写真2】。過去の予想が当たったことばかり強調する著名人も多い中、武者氏の率直な話し方には好感が持てます。その予測しきれなかったサブプライム問題の分析も含め、いよいよ講演のスタートです。
 

サブプライム問題は、ITバブル崩壊より影響軽微に

 
図 米国の株式と不動産の資産価値(データは現数値)
図 米国の株式と不動産の資産価値(データは現数値)
出所.Flow of Funds、ドイツ証券
武者氏はサブプライム問題について、「イージーに考えてはいけませんが、米国経済を陥れるほどのものではありません」と指摘します。米国の住宅価格は昨年後半から頭打ちとなりました。現在、米国の不動産の資産価値は約24兆ドルで、仮に2割下落したとすれば4兆ドルほどが毀損されることになりますが、「2000年にITバブルが破裂した時、株式と投資信託の価値が約2年で6兆ドル減少したことに比べれば実態経済への影響は少ないでしょう」と言うのです【図参照】。
サブプライム・ローンの延滞が増えた背景には、住宅価格の上昇が続かなければ返済できないような仕組みそのものに原因がありました。返済能力の低い、住宅を持てなかった人が利用しやすい一方で、「かなりの利用者は住宅の値上りを期待して資産運用の一環としてサブプライムで住宅を購入したようです」。
このような投資目的の住宅が抵当流れになれば金融機関の損失も増えるかも知れませんが、住宅の価値そのものがゼロになることはありません。サブプライム関連商品が紙くず同然に下落したことは行き過ぎというわけです。
 

楽観は禁物だが、危機感を持ちすぎることもダメ

 
写真3 セミナーの様子
写真3 セミナーの様子
市場では現在、一般の住宅ローンや企業向け貸付の延滞が増えるのではないかとの懸念も持たれています。しかし武者氏は、「優良な貸付の延滞が起こるのは失業のほか、売上の減少です。住宅価格の下落ではなく、景気そのものが悪化した時です」と指摘します。サブプライム以外の貸出債権の売りが落ち着けば、実体経済への影響は小さくなるという見方のようです。
金融機関のサブプライム関連の焦げ付きは、アナリストの間で最大2000〜3000億ドルと見積られています。ただこれも悲観的に見て、米国の国内総生産(GDP)の約2.5%の規模です。「日本の不良債権がピーク時に100兆円に達し、GDPの20%を記録したことと比べれば、サブプライムが米経済を死に至らしめものではないでしょう」とのこと。楽観は禁物ですが、余り危機感を持ちすぎるのは相場分析の時にはかえって見方を誤るので注意が必要です。
その後、米国の労働分配率、米国企業部門の債務残高GDP比率、米国株価の適正価格モデルなど、数々のマクロ経済のデータを駆使して「米経済がリセッションする可能性は低い」という説明が続きます。米国でサブプライム関連の債券が買われ、株式市場に資金が向かわなかった一因として、「銀行の自己資本比率を国際的に規制した新BIS規制の影響もあったでしょう」と指摘するなど、かなり専門的な内容でした。
 

「日本株は有望!四重安の修正が始まる」

 
武者氏の結論は、(1)2008〜09年の世界経済は活況になる(2)2008年は日本株が世界の株式をアウトパフォーム(その他を上回るリターンを記録)する(3)現在のドルは相当売られすぎで「陰の極み」にある――ということでした。さらに、日本の株式、為替、金利、消費者物価指数(CPI)が以上に低い「四重安」は今後、数年から10年かけて修正されるとも指摘。「1990年のバブル期、日本の株式市場の時価総額は世界全体の4割を占めましたが、あの時は『四重高』でした。お分かりの通り、その後の10年間で修正されました」というのは、マーケットの行き過ぎを示す例として実感できそうです。
1時間弱の講演の後は、会場の参加者のほか、インターネットを通じて寄せられた質問に武者氏が答えました。最初の質問は「中国バブルはどうなりますか?」というもの。武者氏は、「中国の投資家がどういう尺度で選んでいるのか分かりませんし、中国企業の収益性も分かりません」としながら、「中国企業は我々が考えているより異質で、株式市場も経済が成長していた2002年に大暴落した経緯があるため、マクロ経済と株式市場の関係も不明です」と答えました。実態経済と株式市場の関係が一致しないことには注意した方が良さそうです。
その他、「株式投資の戦略を、配当重視からバリュー株重視に変えましたが何に注意すべきですか?」といった質問もありました。これに対して武者氏は、「答えに窮しますが、配当も値上がり益も両方大事です。株式の良いところは自分が勝てる分野で勝負できることですので、得意なフィールドを100のうち2〜3個持っていれば良いでしょう」と答えました。世界観と含蓄ある分析が聞けましたので、年明け以降の資産運用の戦略もじっくり練ることができそうです。


【執筆:MoneyLife 片平正二】
掲載日:2007年12月14日



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