特集・コラム [ 団塊世代の知っ得サービス ]

団塊世代の知っ得サービス-5- 旅行会社 趣味を生かしたテーマ型のツアーが人気

第5回目は、余暇時間のできた団塊世代向けに、特徴あるツアーやサービスを提供している旅行会社を紹介する。シニア層向けの旅行ではヨーロッパやアジアに人気が集まる一方、高嶺の花だったクルーズ旅行では30万円台のツアーも登場。旅行シーズンを避ければ、割安に楽しめるプランも多くなってきた。
 単なる観光だけでなく趣味や史跡などのテーマ性を持たせた「提案型ツアー」の企画も増えている。旅行をキッカケとして趣味を通じた交友関係も広がるかも知れない。

 

退職旅行はヨーロッパや北海道が人気、期間は10日ほど

JTBが3月に発表したアンケート調査「団塊世代 国内海外旅行動向」によると、定年退職を迎える人の50.2%が記念旅行を予定しているという。これは1946〜50年生まれの男女を対象にWebアンケートを行い、3417名から回答を得たもの。行きたい地域では、ヨーロッパが男女ともに3割強で断トツとなり、これに北海道やハワイ、沖縄などが続いている【図1参照】。
図1 退職記念旅行で行きたい方面(複数回答可)
図1 退職記念旅行で行きたい方面
JTB「団塊世代 国内海外旅行動向」よりQUICK作成
この傾向について、JTBでは(1)これまで行けなかった場所(2)思い出の場所(3)あこがれの場所――と分析している。ヨーロッパの人気が女性に高い一方、男性は北海道、東南アジアなどに関心を集めている。最近話題の秘境ツアーなどの影響もありそうだ。
旅行にかける期間は「1週間から10日間」が38.6%で最多を占めた。1カ月以上のロングステイは4.4%に止まる一方、2〜3泊が26.6%、4〜5泊が20.3%となっている。5泊以下の比較的短いツアーが約5割を占める意外な結果が出ている。
ただ記念旅行にかける1人当たりの平均予算は海外旅行で30万7000円、国内旅行で11万5000円となった。2005年度の旅行業界主要50社のパッケージツアーの平均費用はそれぞれ海外16万2000円、国内2万5000円だったため、JTBでは「退職記念の節目のイベントとして、ちょっと贅沢に過ごしたいという気分がうかがえる」と指摘している。
 

団塊世代に人気のヨーロッパ旅行、地中海クルーズ

JTBでは、シャネルなどの高級ブランド店がひしめく銀座並木通りで、富裕層向け店舗「ロイヤルロード銀座」を運営している。JTB首都圏ロイヤルロード銀座事業部営業1課の梶田隆明氏によれば、団塊世代に人気があるツアー地はイタリア、スペイン、スイスなどのヨーロッパ諸国だという。「治安が安定していて、美術品などの文化や美味しい食事も楽しめるため、根強い人気があります」(同)。チューリップが咲く4〜5月はオランダの人気も高い。店内にあるパンフレットの内容を見ると、約6割がヨーロッパ地域となっている。
団塊世代向け主力ツアーは「旅彩彩(たびさいさい)」という50歳以上の人を対象としたもの。ツアー地の選定もさることながら「宿泊や移動の時間をゆったりと取り、荷物の宅配サービス、成田空港でラウンジを用意するなどしてお客様が快適に旅行できるよう努めています」(同)という。ツアーは10〜12日間のスケジュールで、価格も1人当たり60万円前後。飛行機がビジネスクラスになれば100万円台に入るが、「最近は地中海を巡るクルーズツアーでも30万円台から楽しめます」(同)【図2参照】。ちょっとした贅沢もかなり身近に楽しめるようだ。旅彩彩は全国のJTBの店舗からも申し込むことができる。
図2 JTBツアーの一例
図2 JTBツアーの一例
※旅行代金は1人当たりの金額。出発日の違い、ビジネスクラスの利用、燃料サーチャージなどがあれば変わる。JTBパンフレットよりQUICK作成。
写真1 ロイヤルロード銀座で開かれたスイス旅行の説明会の様子
写真1 ロイヤルロード銀座で開かれたスイス旅行の説明会の様子
銀座店では、この他にもプライベートジェットを手配できるオーダーメード旅行プラン「ロイヤルロード」のほか、国内外の旅行をゆっくり楽しめる「夢の休日」など各種ツアーを取りそろえている。店舗では旅行説明会も頻繁に開かれているため、銀座を散歩がてら寄ってみるのも良い【写真1参照】。
JTBは、今年から「趣味の旅」という新しいツアーも始めた。野鳥撮影やゴルフレッスン、トレッキング、スペインの建築家・ガウディの軌跡を訪ねるツアーなど現在6種が用意されている。「同じ趣味の者同士で輪が広がれば、旅行の後もお客様の交流が続くと思います」(同)という。今後も異業種とのコラボレーションを増やし、サービスを充実させていく考えだ。
 

自分の親も連れて行きたい「提案型の旅」

中堅の旅行会社ながら、シニア層のリピーターが多いことで知られるのがユーラシア旅行社だ。同社が手掛けるパッケージツアーは、いわゆる安・近・短とは一線を画す世界130カ国を対象にテーマを持った観光重視の旅である。平均的なツアーは14日間のスケジュールで、価格も1人当たり40万円前後だという【図3参照】。
図3 ユーラシア旅行社ツアーの一例
図3 ユーラシア旅行社ツアーの一例
※旅行代金は1人当たりの金額。出発日の違いなどで変わる。ユーラシア旅行社パンフレットよりQUICK作成。
同社取締役管理部長の出口桂太郎氏は「当社のツアーは提案型で、大都市を中心とした海外旅行では満足できない方が主な顧客です」と語る。最近はやりの秘境を巡るツアーも10年以上手掛けるなど、ノウハウも蓄積している【写真2参照】。
ツアー参加資格に年齢制限はないが、主な顧客層は60代で50%、50代・70代がそれぞれ15%を占める。シニア世代が中心となり、リピーターも全体の70%を占める。人は誰も本当に旅行を楽しんだ時には土産話をしたくなるようで「口コミで毎年新規顧客も増えています」(同)という。
写真2 ナミビア・ナミブ砂漠の大砂丘の1つ「デューン45」から見た日の出
写真2 ナミビア・ナミブ砂漠の大砂丘の1つ「デューン45」から見た日の出(資料提供 ユーラシア旅行社)
リピーター達に支持されるだけに、サービスの面でも抜かりはない。ツアー料金には食事代も含まれ、オプショナルツアーは組まない。航空燃料の値上げ分を利用客が負担する燃油サーチャージを徴収することもなく、急病などで旅行に行けなくなれば、条件付きだがキャンセル料金の半額は次回ツアーで割引される。添乗員の目が届くようツアーの最大人数も25人までだ。「創業者の方針で、『自分の親を連れて行くとしたらどんな旅行が良いか』を心掛けています」(同)と、海外でチャーターするバスは快適に移動できるよう40席以上の大型バスが基本となっている。
コストを省くため、広告は打たずに、事務所も東京だけ。添乗員は本社と関連会社のユーラシアサービスが担当し、外部には委託しない。旅行先では土産屋に立ち寄らないため、旅行者はじっくりと観光を楽しむことができる。「旅行業者がキックバックを得るため、必要以上に買い物がツアーに組み込まれている例が多いのです」(同)と、顧客重視で無駄なサービスは省いている。
顧客も旅行前の1カ月間は本などでじっくりと勉強し、旅行の後は復習、アルバムの整理、ブログの更新などを楽しむ人が多いという。「1回の旅費が数十万円だと高いかも知れませんが、旅行を前後して半年はいろいろ楽しめます」(同)。
 

JRは各社が会員サービスを導入、切符割引などでメリット 

図4 JR各社の会員制サービス一覧
図4-1 JR各社の会員制サービス一覧
図4-2 JR各社の会員制サービス一覧
夫婦会員の年会費は表に含んでいない。各社公式サイトよりQUICK作成。
JR各社では、国内旅行でお得な会員制サービスを提供している。「ジパング倶楽部」は男性65歳以上、女性60歳以上(夫婦の場合はどちらかが65歳以上)を対象としたもので、JR共通である。国鉄時代からシニア層の鉄道利用促進を目的に行われている。シニア層の手前の50歳代の団塊向けサービスも、各社がそれぞれ展開している【図4参照】。鉄道会社らしく切符の割引サービス、乗り放題の切符などで各種のメリットを受けられる。
ただジパング倶楽部は全社共通の割引が受けられるものの、50歳代の団塊向けサービスでは横の提携がほとんどなく、会員資格を60歳以上と年齢を高めに設定した会社も多い。年会費も無料のものから4170円まで様々なため、会費に見合ったお得なサービスを検討したい。

 

乗り放題切符、テーマ性の旅行で日本再発見?

JR東日本では、団塊世代を中心とした50歳代向けに「大人の休日倶楽部ミドル」、従来のジパング倶楽部世代向けに「大人の休日倶楽部ジパング」という会員制サービスを実施している。従来の「大人の休日」という旅行ブランドを発展させ、クレジットカードの同時契約による会員制サービスとしたことが特徴だ。2005年6月からサービス開始後1年半が経過し、会員数は56万人(3月末時点)に増えた。
同社鉄道事業本部営業部・大人の休日グループの小野正志副課長は「新幹線など鉄道で旅行しやすい環境をつくり、良質な商品を提供できれば鉄道利用の促進につながると考えました」と語る。同社の旅客事業の収益構造は、定期券収入が4分の1、近距離の切符収入が4分の1、新幹線などの中長距離収入が2分の1である。団塊世代達の大量退職、少子高齢化という社会環境を考えると、今後は定期券収入・ビジネス利用の近距離収入・中長距離収入は確実に減っていくことが予想される。会員制サービスの狙いは新たな観光需要の掘り起こしである。
大人の休日倶楽部の会員は、JR東日本の切符・旅行商品の割引のほか、会員誌の発行、人間ドックの割引、提携メガバンクの預金金利優遇などのメリットが受けられる。特に好評なのが年4回販売される「大人の休日倶楽部会員パス」だ。JR東日本エリアに加え、北は函館、西は福井まで3日間電車乗り放題の特別切符が1万2000円【写真3】。
写真3 大人の休日倶楽部のパンフレット
写真3 大人の休日倶楽部のパンフレット
新幹線の普通指定車にも6回乗ることができるため、決して安かろう悪かろうの格安切符ではない。「旅行プランでも瀬戸内寂聴さんの講演会に参加できたり、講師つきで史跡を巡るツアーを企画するなど、価格は高めでも趣味嗜好にあった良い物を用意しています」(同)という。鉄道利用が多い会員には、より特典の多いプレミアメンバーズサービスも受けられる。
鉄道会社はもともと、非常に地域に密着し、かつ公共性の高い企業である。JR東日本でも観光開発は12支社全てが取り組んでいることで「各地の担当者が自治体や旅館等の観光施設などと情報交換し、新しい旅行・観光のアイディアを出しています」(同)という。
 

健康や介護で旅行に行きにくい事情も

冒頭のJTB調査では、団塊世代にとって旅行の障害になる数々の要因があげられている。最も多かったのが「将来の生活への不安」の30.6%、これに「自分や配偶者の健康」の30.0%が続く。「親の介護」が25.4%、「ペットなどの世話」も18.9%の回答があり、シニア世代の生活事情がうかがえる。
退職時期さえ千差万別となっているようだ。アンケートの有効回答者のうち、主たる生計者が60歳までに定年を迎える人は52.9%に止まった。60歳以降に定年退職を迎える人が17.2%、定年退職がない人も29.9%に上っており、退職後に働くかどうかを決めていない人も多いという。
2006年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行されたことで、定年後の継続雇用制度が導入されている。厚生年金の支給開始年齢の65歳への引き上げが段階的に始まる中、生活費を得るために働く団塊世代も増えそうだ。様々な事情を抱えたシニアのニーズに応えるツアー企画を期待したい。

【執筆:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年4月13日)

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