特集・コラム [ 金利 ]

金利-5- 住宅ローンについて ゆとりある返済には固定金利がベスト

金利が決まるメカニズム特集の第5回目は、生活に身近な住宅ローンについてレポートする。住宅ローン金利は長期金利の指標である10年物国債利回り(金利特集第4回を参照)に連動して動く。日銀が利上げしても、債券市場で国債が売られる展開は見込みにくいため、しばらくは住宅ローン金利も上昇しにくい状況が続くと見られる。
 しかし、10年、20年という長い返済期間を考えるなら、住宅ローンの金利負担は安定して低い方が良い。今回は固定金利の住宅ローンとして、住宅金融公庫と民間金融機関が提携している「フラット35」を具体的な例にあげながら、固定型のメリットなどを紹介する。また預金を活用して金利負担を下げられる商品として、東京スター銀行の「預金連動型住宅ローン」にも注目してみた。

 

住宅ローン残高は100兆円を突破、固定型が主流に?

日銀の統計「各種貸出残高」によると、日本の住宅ローン残高は102兆3769億円で過去最高を更新している(2006年12月末時点)。日銀によると、このなかで変動金利・固定金利の内訳は不明だが、借り換え需要が一服したものの、底堅い住宅投資を背景として住宅ローンの利用が増加傾向にあることは確かなようだ。
国土交通省2005年度民間住宅ローンの実態に関する調査
(住宅関連事業者向け、複数回答可)よりQUICK作成。
住宅購入意欲が強いなか、住宅ローン利用者はどんな商品を選択しているのだろうか。国土交通省が2006年3月に発表したアンケート調査によると、金融機関が利用者に対して奨めていた住宅ローンのうち、変動金利型は12%にとどまっていたという【図1参照】。これに対して固定金利型は全体で80%を占めている。長期金利が低下する局面では変動金利型の住宅ローンの方が支払い利息を低く抑えられるが、今後は長期金利の上昇が警戒されている。金融情勢を踏まえて、金融機関が固定金利の住宅ローンを奨める傾向は一層強まるとみられる。
 

 公庫と321の民間金融機関が提携した長期固定ローン

図1の国交省アンケートで、固定金利型のフラット35という個別商品を奨める意見は19%に達した。このフラット35とは、その名前が示す通り、固定金利で最長返済期間が35年の住宅ローンである。住宅金融公庫が321の民間金融機関と提携して販売しているもので、2003年10月から取り扱いをはじめた。2007年1月末までの買取申請(融資申込戸数)は12万8481件。これまでの実績を見ると、金利が低下した局面などに融資が増えていることがわかる【図2参照】。
住宅金融公庫・総務部広報課副調査役の北村靖子氏によれば「最近は金利上昇が警戒されているせいか、若い方が住宅購入予定を前倒して融資を申し込むケースが増えています」という。
フラット35の主な特徴は4つ。1つ目は固定金利のため金利変動を受けないということ。
2つ目は住宅建設費やマンション購入費の90%まで、最高8000万円の融資を受けられること。従来は80%までの制限があったが、2007年4月から資金を受け取る際に適用される(金融機関によっては3月からの取扱も可能)。利用者の手持ち資金が少ない場合、他の民間金融機関などで二重にローンを組まなければならなかったため、利用者のニーズに応えたものである。
3つ目は保証人や保証協会への加入が必要ないこと。公庫にとっては信用リスクを抱えることになるが、保証料といった中間コストを抑えられる。また繰り上げ返済の場合の手数料も掛からない。
4つ目は、住宅の断熱性や耐久性などに公庫独自の基準を設けていること。「国の組織として業務が始まったため、独自基準を設けることで住宅の質向上を図る狙いがあります」(前出・北村氏)。実際の物件の検査は検査機関に委託して行う。またバリアフリー、耐震性、省エネの基準を満たした優良住宅に対しては、「フラット35S」の融資が受けられる。これは国からの補助によって、当初5年間の融資金利を0.3%優遇するもの。予算に限度があるため、2005年6〜8月、2006年6〜10月までの期間に限定されて募集が行われたが、図2にある通り申込が殺到していたことがうかがえる。
 

MBSで資金を調達、市場メカニズムを反映

公庫のローンに限らず、住宅ローン金利は長期金利に連動して動くわけだが、フラット35の場合その仕組みが非常に分かりやすい。それというのも、従来の公庫融資は財政投融資(※注1)から資金を調達していたが、フラット35は資金調達を公庫が発行するMBS(※注2)によって機関投資家から調達するからだ【図3参照】。銀行のように預金を集めてローンを貸し出すのではなく、住宅ローン債権を証券化して、市場から調達した資金をもとに住宅ローンを貸し出すのである。

注1 財政投融資=郵便貯金、公的年金など、国の制度に基づいて集められた各種公的資金を原資として、政策実現のために行われる政府の投融資活動のこと。戦後の右肩上がりの経済を支えた原動力の1つ。しかし、国の信用力や補助金によって市場メカニズムが働かない仕組みは、かえって経済をゆがめるものとなった。2003年12月、「特殊法人等整理合理化計画」が閣議決定され、全ての特殊法人などの組織・事業の見直しが始まった。財務省資料によると、住宅金融公庫については、過去の高金利の貸付金に対する繰上返済が発生し、業務収支に大きな「逆ざや」が発生したことが問題になったという。
注2 MBS(エム・ビー・エス)=Mortgage-backed Securities、日本語で「不動産担保証券」のこと。住宅ローンの元利金を返済原資とした証券化商品で、米国ではファニー・メイ、フレディ・マックといった政府支援機関(GSE)が手掛けていることで有名。MBSを発行する会社は、個別の貸付者に対する信用リスクを証券化によって切り離せる一方、買い手の機関投資家にとっては小口の貸付債権をまとめたパッケージングによって、貸し倒れリスクの分散効果が期待できる。
住宅金融公庫が発行するMBS(貸付担保住宅金融公庫債券)は期間10年の償還と関係者の間では言われており、フラット35の買取実績に応じて毎月発行される(※注3)。2005年度の実績は2兆378億円となり、機関投資家がこのMBSを購入することで住宅ローン資金が調達された。ちなみに2月7日に発行された51回債(発行額1075億円)の利率は2.21%。新発10年物国債と比べて、0.55%の上乗せ利率(スプレッド)がついている。この上乗せ利率が小さくなれば調達コストは低下するため、その分、住宅ローン利用者の金利負担も減るだろう。その時のMBS市場の相場環境、機関投資家の購入意欲によってこの上乗せ利率は変わってくる。
現在、フラット35は321の金融機関で申し込むことができる。全ての都銀、9割以上の地銀、信用金庫・信用組合・労働金庫、保険会社、モーゲージバンク(※注4)などが取り扱っており、金融機関によって融資金利に違いがある点には気をつけたい。また融資手数料も金融機関によっては、自社のローンと併用することで割り引くところもある。各金融機関のサービスの併用状況などによって変わるため、じっくり比較・検討した方が良いだろう。「これまでのフラット35の業態別実績としては、モーゲージバンクが46.9%、都銀・信託が29.7%のシェアを占めています」(前出・北村氏)。
なお住宅金融公庫は、4月1日から独立行政法人・住宅金融支援機構に組織が変わる。従来の公庫融資は廃止されるが、民間金融機関と提携したフラット35のサービスは継続して行われるという。「民間金融機関が資金を調達する場合、預金で調達することは変動金利での調達となるため難しい面もあります」(同)。今後は住宅金融支援機構として、証券化による長期かつ低金利の資金調達に特化し、民間の住宅金融をサポートするという。
注3 フラット35は最長で35年の返済計画が組めるため、理論上は公庫が発行するMBSも償還には最長で35年掛かることになる。しかし実際は、住宅ローン利用者が前倒し返済するため、住宅ローンの支払いは10年程度で終わるという。この結果、公庫が発行するMBSも約10年で償還を迎えるケースが多いと見られる。
注4 主に住宅ローンの貸出を専業とする金融機関のこと。フラット35の買取申請件数の実績では、日本住宅ローン、SBIモーゲージ、協同住宅ローンなどが上位に並んでいる。
 

預金を貯めれば貯めるほど、利息が減る住宅ローン?

住宅ローンを固定金利で借りたとしても、利用者としては身近な生活資金を確保しておきたい。こんなニーズに応える銀行の住宅ローンもある。東京スター銀行では、日本で初めて預金連動型「スターワン住宅ローン」を手掛けた。これは住宅ローンを借りた場合、普通預金(外貨普通預金含む)の残高と同じ金額の住宅ローン残高に、金利が一切掛からない仕組みの商品だ。

東京スター銀行の伊藤香苗氏
同社マーケティングの伊藤香苗ヴァイスプレジデント【写真】は「余裕資金があるのならローンの繰上げ返済が有効ですが、それと同じ効果で支払利息を減らし、お客様の実質的な負担を減らすことができます」とメリットを指摘する。最大1億円までの融資が受けられ、金利は変動金利のほか固定金利も3年、5年、10年のタイプから選べる。
同社顧客の平均的な利用額は2000〜3000万円。融資額の2割くらいを預金で確保する利用が多いようだが、なかには融資額の100%を預金した人もいるという。この場合、住宅ローンに金利は全く掛からない。また預金が全くない若い人でも、積立預金による「スタートオン住宅ローン」を使えば、その後の預金残高に応じて支払利息を減らすことも可能となる。「預金を行うことで住宅ローンの金利支払額を低くできるメリットを理解していただくと、預金に対するモチベーションを高められるようです」(同)ということで、コツコツ貯める女性には特に好評のようだ。

 

 預金が元本を上回れば金利ゼロに

預金をしながら住宅ローンを返済するシミュレーションをしたところ、預金が融資元本を上回れば特にそのメリットが大きいことが分かった【図4参照】。これは金利条件などでも変わってくるが、図4の条件でシミュレーションした結果、198万円は金利負担が減る。しかも、20年後には2385万円の預金も貯まっている。預金に余裕が出てくれば普通の住宅ローンと同じように繰上げ返済をすることも可能だ。
良いことずくめの預金連動型住宅ローンだが、唯一の欠点は普通預金には金利がつかないことである。しかし、現在のように普通預金金利が0.10%の場合、普通預金で運用した金利収入より、負債側のローン金利の支払いを減らした方が実際はずっと得である。
40歳で500万円の預金があり、60歳までの20年間で2500万円を返済(固定金利型10年で3.5%、10年後に4.0%に金利が上昇すると仮定)。融資手数料7万3500円、ローン契約書印紙税2万円、登録免許税(概算)10万円など含む。保証料・1ヶ月目の金利は掛からない。
(東京スター銀行資料よりQUICK作成。)
 

変動・固定の選択は「ゆとりあるライフプラン」で

東京スター銀行では2006年10月から、「自由返済型スターフィット住宅ローン」という商品の取り扱いもはじめた。これは万が一、住宅ローンの返済が難しくなった時に元本部分の返済を繰り延べられる商品だ。
この商品が生まれたキッカケは、現在一般世帯に占める共働き世帯の割合が45%以上になっている時代背景と、実際に顧客からの要望があったからだという。この商品では夫婦2人の収入を合算して融資の審査を受けられる。派遣労働者やパートタイマー、またはフリーの美容師など、夫婦で定期的な収入があるにも関わらず、これまでは正社員でないことを理由に審査が通らなかった人たちにも住宅ローンを融資しようという趣旨だ。
前出の伊藤氏は「変動、固定など、様々な住宅ローンがありますが、やはりお客様のライフプランにあった商品を利用するのが一番良いのではないでしょうか」とアドバイスする。金利優遇キャンペーンの機会を利用して、最初は変動金利で良い条件で借りられたとしても、市場金利が上昇に転じれば月々の返済は苦しくなる。タイミングよく固定金利で借り替えられれば良いが、余計なコストも掛かるだろう。
夢のマイホームを買いながらも、何年も借金返済に追われる家庭もあるが、住宅ローンをきっかけにして前向きなライフプランに取り組む。そんな風に発想の転換を促してくれる住宅ローンがどんどん登場して欲しいものだ。
【執筆:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年2月28日)

●第6回目は、利上げに伴い株式市場にはどんな影響が出るのか。業種ごと、マクロ的な問題を踏まえてレポートします。

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