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【第21回】BRICs経済特集−5−「中国株はバブル、経済成長は農村リスクを抱える 元日銀・香港駐在参事の大西義久氏に聞く」

(4)人民元高はまだ続くのか=闇ルートで元売りが出る可能性も

質問 ところで、人民元も一本調子で強いですね
人民元は11月に入り、一時1ドル=7.4106元まで元高が進みました。2005年7月に8.2765元から切り上げが始まりましたから、約2年かけて1割強上昇したことになります。非常にゆっくりとしたペースと言えるでしょう【図3参照】。国内経済への影響を考えると、妥当な策だと思います。
米国は常に大幅な元の切り上げを求めていますが、米貿易赤字の4分の1を中国が占めるとはいえ、為替調整だけでこれを解決するのは無理です。中国から輸入すると割高になるようなくらい元が切り上げられれば別ですが、その時は他のASEAN諸国からの輸入が増えるだけでしょう。
図3 人民元の対ドルレート推移(月足)図3 人民元の対ドルレート推移(月足)
ActiveManagerよりQUICK作成
米国の借金・過剰消費体質が変わらなければ、日本からの輸出が減らなかったことと同じことが、中国でも言えるのではないでしようか? また中国の国際金融面の自由化の観点からみても、まず資本取引の完全自由化を実施し、その後に為替相場の柔軟化を図るのが筋だと思います。
日本が輸出入などの経常取引を認め、IMF8条国(※注4)となったのは1964年でした。資本取引を原則自由化したのは1980年で、完全自由化を果たしたのはようやく1998年になってからです。中国は1996年にやっとIMF8条国になり、これにあわせて資本取引の自由化も模索しましたが、アジア通貨危機で他の国が混乱したことを受け、国内経済への影響が大きいということで資本規制の解除を見送りました。
※注4 IMF8条国=国際通貨基金(IMF)協定8条に規定した、加盟国の義務履行を受けいれた国のこと。(1)経常取引を制限しない、(2)差別的な通貨政策をとらない、(3)他の加盟国の保有する自国通貨に交換性を与える――ことが主な義務となっている。

質問 国内経済への影響とは、やはり農村問題ですか?
そうです。中国は2001年に国際貿易機構(WTO)に加盟しました。貿易が自由化されれば輸出入とも増加し、自国通貨が強くなれば輸出には抑制効果、輸入には促進効果が働きます。中国の輸出は低廉な人件費のお陰で少々の人民元高でも競争力は落ちないと思いますが、輸入の方は農産物の競争力が弱いため、人民元高が農産物輸入の増加に直結し、農村の惨状にさらなる打撃を与えることになりかねません。人民元の急速な上昇が難しい理由の1つがこの農業問題です。
一方で、元安に進むリスクにも触れましょう。貧困層や農民の暴動で政情が不安になったとき、香港を経由した闇ルートで国内の資金が海外に逃げる可能性があります。このような資金の動きは統計上の誤差脱漏として確認されていますが、元高期待もあって、いまのところ中国国内に流入する方が多いのです。中国当局が管理しているとはいえ、暴動などをキッカケにして人民元が暴落する可能性も全くないわけではありません。中国経済には発展の余地が非常にありますが、投資の際には中国特有のリスクを理解した上で、投資した方が良いでしょう。

【インタビュー:2007年11月、聞き手:MoneyLife 片平正二】
(掲載日:2007年11月19日)

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