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ETFと投資信託

信託報酬、販売手数料、ビッド・アスク・スプレッド、プレミアム/ディスカウントで比較する

ETF(上場投資信託)についてよくある質問のひとつに、「ETFと投資信託との違いはなんですか?」というものがある。 ETFと投資信託とを比較した場合、一般的にいわれるのは下記の感じである。

 

ETFは信託報酬が安い?

ETFのコストだが、特に信託報酬とよばれ投資家がETFを保有している期間中かかる管理手数料については、一般的な投資信託より安いといわれている。例えば、2009年末時点で日経平均株価に連動するインデックスファンド46本の信託報酬の平均は0.56%。これに対して日経平均株価に連動するETF5本の信託報酬の平均は0.23%である(リッパーのファンドデータ分析システム「Hindsigth」による)。 

ETFの信託報酬が低く抑えられている理由としては次のことがあげられる。  

(1)株価指数連動型ETFは、指数へ連動するように組み合わせた現物株式を証券会社や機関投資家に拠出してもらい、それと引き換えにETFの受益証券を発行する仕組みである。構成銘柄の変更などがなければ、原則として市場で株を売買することはないので、マーケット・インパクトを小さくする(つまり運用コストを低く抑える)ことができる。 

(2)信託報酬のうち、代行手数料と呼ばれる、一般的な公募投信の信託報酬に含まれる販売会社への報酬がETFにはかからない。投資信託の販売には、商品説明書ともいえる目論見書の交付義務があるが、ETFについては市場で売買する個人投資家に対して交付義務が除外されている。また運用報告書の作成義務もない。 こうした簡素化も、コストを下げる要因の一つである。

(3)通常のETFは株価指数など特定の指標に連動するインデックスファンドなので、個別の銘柄を調査する費用がかからない(*今回は注目しないが世界にはアクティブ運用のETFもあるのでご参考まで)。

ETFの売買手数料は?

投資信託の場合には、販売手数料無料の場合もあるが、ETFの場合は、上場株式と同様の売買委託手数料がかかる。これは各証券会社が約定代金に応じて独自に決めている。ネット証券でオンライン取引をすれば、安く設定されているが、店頭窓口で投資相談などのサービスを受けての注文となればコンサルティングフィーがかかる分だけ割高となる。例えば、ある大手証券会社店頭では国内ETF1取引あたりの売買手数料が最低2,730円(最大1.3650%)である。 

ETFの売買時にはこの売買委託手数料に加えて、「ビッド・アスク・スプレッド」と呼ばれる、買値と売値の差によるコストがある。ETFの実効スプレッドは「出来高の大きいETFであれば最大0.15%前後だが、出来高の小さいETFであると最大3.51%」となっている(2009年3月10日金融庁金融研究研修センターの報告)。また、ETFの市場価格は需給により基準価額と乖離することがある。例えば相場の急落時には売りが膨らむので、ETFの市場価格は基準価額を下回り急落する。基準価額に対して市場価額が安くなることを「ディスカウント」といい、逆に基準価額に対して市場価額が高くなる場合を「プレミアム」という。ディスカウントのときに売れば割安に売ることになり、これは売り手にとってのコストになる一方、プレミアムのときにこのETFを買えば、割高に買うこととなり、買い手にとってのコストになる。

ビッド・アスク・スプレッドもプレミアム/ディスカウントもETFにあって、通常の投資信託にはないもの。 上場している金融商品の売買において、価格に発生するコストであり、ETFの投資家はしっかり考慮する必要がある。 

ETF先進国である米国をみると、2009年末現在、世界最大のインデックスファンドを運用する米バンガード社はETFの運用会社としても大手であるが、同社のETFの目論見書(米国ではプロスペクタスと呼ぶ)には、ETFの特別なリスクとして、ビッド・アスク・スプレッドや、プレミアム/ディスカウント「ETFの市場価格は基準価額と乖離することがある」の説明がある。さらに銘柄ごとプレミアム/ディスカウントの設定来の実績が開示されている。例えば世界の株式ETFで2009年の年間資金純流入トップの「バンガード・エマージング・マーケット株式ETF(Vanguard Emerging Markets ETF)」(資金純流入額90億米ドル)は、プレミアム(市場価額>基準価額)が0〜0.24%の日が、2005年3月4日の売買開始から2008年末までの約3年弱の間に164日で全体の日数の約17%、プレミアム1%超の日が97日で同10%を占めたという。

ETFにはビッド・アスク・スプレッドやプレミアム/ディスカウントがあると述べたが、逆に、投資信託に関してはこれらが無いということはメリットになる。投資信託の売買価格である基準価額が1日1個しかないのは、一見するとETFより不便にもみえる。しかし、ETFの売買価格は取引時間中にさまざまな要因で時々刻々変動するが、この価格がたくさんあるということは必ずしも1日1個しかない基準価額より優位とはいえないだろう。 値動きをするということは、売買が少なくなり、流動性が低下するとビッド・アスク・スプレッドやプレミアム/ディスカウントは拡大する。 もちろん、急落相場で売れば想定していた値段より安く売る可能性があるものの、買う場合には安く買えるときもある。また急騰相場で高く売れることもあるので、その意味ではプレミアム/ディスカウントがETFのデメリットともいえないだろう。 

また、ETFの売買手数料でもコンサルティングを受けたい場合には別途手数料がかかると述べたが、ETFの目論見書についても同様である。目論見書は実際に作成され、運用会社のHPで個人投資家も閲覧は可能だが、本来これは設定を行おうとする大口投資家向けのもの。ETFの個別銘柄に関する情報は、証券取引所や運用会社などのHPにアクセスして個人投資家が主体的に入手することになる。 一方、目論見書を手にとってじっくり読んで、またアドバイスをもらいながら買いたい人は手数料を払って投資信託を選ぶことになる。

つまり、ETFは単に投資信託のコストを安くしたものというだけでなく、投資信託におけるコストを細分化して安くしている面も多い。ETFはそもそも5億や10億円で申し込むといった大口投資家向け長期保有のクローズドエンド型につくられたもの。その一部が個人投資家に開放され、現物で設定交換することにより抑えられたコストメリットを、個人投資家も享受できているともいえる。

ETFと投資信託との比較は、一般的には<表1>に掲載したテーブルのようにいわれていることが多いが、これに前述してきたことを加えると、下記のテーブルのように考えられる。

 

先に、「ETFはそもそも5億や10億円で申し込むといった大口投資家向け長期保有のクローズドエンド型につくられたもの。」と述べたが、ここから投資信託と、ETFにおける大口投資家との話になる。 2009年10月30日に米バンガード社は、同社の「Vanguard Emerging Markets Stock Index Fund」 の購入時手数料を0.25%から0.50%に引き上げた。このファンドの組み入れ第二位の国、ブラジルの政府が10月20日以降に行われる外国人投資家によるレアル建株式・債券等への投資に際して、ブラジル現地へ送金する際の為替取引に2%の金融取引税を課したことによる。課税以降にこのファンドに買いの申し込みがあった場合には、市場から有価証券を買い付ける分の取引コストが新たに増加するが、その課税相当分のコストは注文した新規投資家でなく、既に当ファンドを保有していた投資家が負うことになる。既存投資家だけの負担となれば、投資家のなかに有利/不利が生じてしまう。 そこで米バンガード社は、受益者全員がコストを負担するように、新規投資家に対しては購入時手数料を引き上げる手当てをした。購入時手数料とは、上記テーブルの買付時手数料と異なり、ファンドに留保される日本でいう追加設定時の信託財産留保額のようなもの。ここで米バンガード社は「Vanguard Emerging Markets Stock Index Fund」というこのインデックスファンドで購入時手数料を引き上げたが、同じくMSCI Emerging Markets Indexに連動する同社のETF「Vanguard Emerging Markets ETF」に関しては引き上げの対象外とした。この理由だが、ETF受益証券の購入は「設定」と呼ばれ、通常は大口投資家が現物株式バスケットを運用会社に持ち込んで行われるため、市場で株を買いつけるコストが発生しない。ETFには設定手数料はかかるが、購入時手数料がそもそもない。 それでETFは手数料引き上げが適用されなかったのである。ただ、ETFを現物株でなく現金で設定する場合には、設定手数料とは別に手数料がかかることとなる。ここでも投資信託のコストがETFでは分割されている。

ブラジルの金融取引税引き上げをうけて、日本で販売されているブラジルファンドでも、投資家が購入する際に手数料をとるというニュースがあった。あるブラジル債券ファンドで、追加設定時に従来は0%だった信託財産留保額を2%かけるというもの。これは米バンガード社と同じで、受益者の不平等をなくすために、コストの公平化をはかったものである。

最後に、東証と大証に上場するETFについて、2009年12月末時点における売買代金の大きい順に並べたのが下記のテーブルだ(大証のETF全13銘柄に揃えて、東証は上位13銘柄を掲載)。基準価額と市場価格(終値)の差であるプレミアム/ディスカウントは、東証や大証では乖離率として公表されている。 先に「売買が少なくなり、流動性が低下するとビッド・アスク・スプレッドやプレミアム/ディスカウントは拡大する。」 と述べたが、2009年12月末の乖離率は最小で+0.01%、最大で-14.87%となっている。一般的には、売買が少なくなるとプレミアムやディスカウントが大きくなる傾向がある。

以上、ETFと投資信託についてさまざまな観点から比較してみたが、十分に考慮して自分にあった商品を選ぶことが大切である。

 

執筆:国際投信投資顧問株式会社 投信調査室 シニア・ファンド・アナリスト 窪田真美
(掲載日:2010年02月09日)


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