東証ETF活用プロジェクト [ ETFを活用した分散投資・ポートフォリオ投資術 ]

【第5回】

ETFの「価格変動リスク」の水準は?

前回(第4回)、ETFの「価格変動リスク」(標準偏差)の大きさは、投資対象となっている資産クラスや、連動指数によって異なることを確認しました。
では、同じ連動指数のETFは、どの程度同じような動きをするのでしょうか?
図表1は、TOPIXを連動指数とした3本のETF(【1305】ダイワ 上場投信-トピックス(大和証券投資信託委託)、【1306】TOPIX連動型上場投資信託(野村アセットマネジメント)、【1308】上場インデックスファンドTOPIX(日興アセットマネジメント))とTOPIXの累積リターンの推移です。いずれも2002年12月末を100とした場合の7.5年間の市場価格の動きを示しています。
図表1 TOPIXを連動指数とした3本のETFの累積リターン(2002年12月末=100)
図表1 TOPIXを連動指数とした3本のETFの累積リターン(2002年12月末=100)

図表1から、TOPIXを連動指数とした3本のETFは、すべてTOPIXと同様な動きをしており、価格変動性にほとんど差異が無いことがわかります。このことから、ETFは運用会社や上場日、純資産総額など個別事情が異なっていても、連動指数と概ね同様な価格変動性をもつことから、ETFの価格変動性を把握するためには、その連動指数の価格変動性を把握すればよいことになります。
このことは投資家にとって、貴重な情報となります。なぜならば、上場したばかりのETFは、パフォーマンスレコードが短く、長期間のデータを用いた分析をすることはできませんが、そのETFの連動指数は大抵の場合、長期間のパフォーマンスレコードがあるため、そのデータを用いて代替的にETFの価格変動性などを把握することができるためです。
では、なぜ長期間のデータを用いて価格変動性を把握することが望ましいのでしょうか? 図表2は、主要資産クラスの価格変動リスクを示す標準偏差(年率:%)の推移です。それぞれの標準偏差は36カ月間の月次リターンデータから計測しています。

図表2を見ると、価格変動リスク(標準偏差)の水準は、時期によって高くなったり、低くなったりしており、価格変動リスク(標準偏差)の水準自体が変動していることがわかります。したがって、ある計測時期における短期間の計測値を鵜呑みにすることは危険です。
価格変動リスク(標準偏差)をこのような短期間で計測した場合、どのような投資行動になるか想像してみましょう。例えば、市場が堅調に推移していた2006年頃は、主要な資産クラスの価格変動リスク(標準偏差)が、長期的な平均水準よりも低めに計測されるため、つまり市場リスクが過小評価されるため、投資家は本来取り得るリスク許容度以上にリスク性資産を保有してしまう危険性があります。一方、2000年頃は、主要な資産クラスの価格変動リスク(標準偏差)が、長期的な平均水準よりも高めに計測されるため、言い換えると市場リスクが過大評価され、投資家がリスクを取ることを必要以上に抑制してしまい、持たざるリスク(機会損失)が発生する可能性が高まってしまいます。
以上のことから、短期間のデータで計測した価格変動リスク(標準偏差)に基づき、投資の意思決定をすることは避けるべきでしょう。
図表3では、計測開始年月別に2010年6月末までの価格変動リスク(標準偏差)を計測しました。
計測期間が長くなるほど(グラフの左方向に行くほど)、価格変動リスク(標準偏差)の計測結果が安定することがわかります。一方、計測期間が短くなるほど(グラフの右方向に行くほど)、2008年の世界的な金融危機の影響により価格変動リスク(標準偏差)が高まっています。

さて、ここで問題です。

次の資産クラスの「価格変動リスク」(標準偏差)は、何%程度と言えるでしょうか?

(1) 国内株式
(2) 外国株式
(3) 新興国株式
(4) 国内債券
(5) 外国債券
(6) 新興国債券
(7) コモディティ

答えは、次回をご覧ください。

執筆:イボットソン・アソシエイツ・ジャパン マネジング パートナーCIO/小松原宰明
掲載日:2010年月08月23日
小松原 宰明氏小松原 宰明氏プロフィール
イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社 マネジング パートナーCIO
(社)日本証券アナリスト協会検定会員
http://www.matonavi.jp/
1987年慶應義塾大学理工学部卒業、日本長期信用銀行入行。長銀投資顧問システム運用部ファンドマネジャー、UBSアセットマネジメント国内株式ポートフォリオ・マネジャーを経て、2000年11月イボットソン・アソシエイツ・ジャパンを共同設立。著書に『リスク・リターンの経営手法』(共著、中央経済社)、『ポリシー・アセットアロケーションの重要性』証券アナリストジャーナル2008年9月号(第20回証券アナリストジャーナル賞受賞)、『債券の期待リターンの推計−実証分析と将来シミュレーション−』(日本ファイナンス学会第12回大会予稿集)、『ポートフォリオ・マネジメント・プロセス』(共著、証券アナリスト第1次レベル通信教育講座テキスト)などがある。

この特集のバックナンバー

東証ETF活用プロジェクト 記事一覧


ソーシャルブックマークに登録:

 

ページの先頭へ戻る