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投資信託 [ ファンドマネージャーインタビュー ]

【第5回】JF中小型株オープン JPモルガン・アセット・マネジメント 太田マネジングディレクター シニア・ポートフォリオ・マネジャーに聞く
「利益成長する企業・リスクの高い企業を見極める極意」

ファンドマネージャーの経歴は様々だ。ずっと運用サイドの人もいるし、営業畑出身の人もいる。今回は、数々のアナリストランキングで1位受賞の経歴を持つ太田マネジングディレクター シニア・ポートフォリオ・マネジャーに、利益成長する企業とリスクの高い企業の見分け方について話を聞いた。 

投資のポイントは何ですか?

太田忠マネジングディレクター シニア・ポートフォリオ・マネジャー(以下太田SPM):

主なポイントは次の3点です。

迅速な決断の秘訣は?

太田SPM:

小型株市場は株価の動きが早く、良い情報・悪い情報のどちらを掴んでも、すぐにアクションを起こさないと売買タイミングを逃してしまいます。我が社には専任のアナリストがいません。国内の中小型株ファンドを、当ファンドを含め4名で運用していますが、全員がアナリストを兼任したファンドマネージャーです。私達は常時お互いの顔を見合わせて仕事をしています。取材後は、すぐに4名でディスカッションを行い、銘柄の売買などを決定しています。

我が社で特筆すべきは、トップミーティング件数の多さです。06年はこのチームで延べ2000社を取材しました。1人頭約500社になります。私自身を振り返ると、証券会社のアナリスト時代には年間200社程度が限界でしたが、今はその倍以上の件数の取材を行っています。

トップミーティング件数が多いのは何故ですか?

太田SPM:

「情報は足で稼ぐ」と言いますが、ミーティングをすることで市場に織り込まれていないような情報も入ってきます。現在日本の株式市場に上場している企業はおよそ3900社です。このうち正式なディスクロージャー(情報公開)の決算短信以外、アナリストレポートも何も出ていない企業が1500社ほどあります。アナリストにカバーされていない銘柄も含めて、利益が顕在化する前の企業にいち早く投資できれば、その分値上がりするチャンスも多いわけです。

利益成長のポテンシャルが高い企業の見つけ方は?

太田SPM:

小型株時価総額が小さくなればなるほど、大型株に比べて企業の利益成長率が高くなる傾向があります。私達は、長期的には企業の利益成長が原動力となって株価が形成されると考えているため、利益成長のポテンシャルがどのくらい強いかを重視した投資を行っています。

それを計測するのに良い指標の一つが、PEGレシオ(=PER(※1)÷利益成長率:企業の成長と割安度の両方を考慮した指標)です。PEGレシオが低いほど利益成長率から見て割安だと言えます。当ファンドでは、PEGレシオが常に1倍を切るということを常に心掛けています。(※2)


(※1)PER = 株価 ÷1株当たり利益、PERが高ければ割高、PERが低ければ割安ということができます。

(※2)例えば、ファンドの組入銘柄全体のPER平均値が20倍だった場合、利益成長率の平均が20%以上ないとPEGレシオは1倍を切りません。

(表)株式市場別の平均PERとPEGレシオ

2008年決算期予想 平均PER(倍)  経常利益成長率(%)  PEGレシオ(倍)
TOPIX
東証2部
ジャスダック
東証マザーズ
へラクレス
21.6 ÷ 11.3 1.9
17.9 15.8 1.1
19.4 19.7 1.0
40.6 72.9 0.6
23.9 36.1 0.7
※JPモルガン・アセット・マネジメントの試算値、データは2007年1月25日時点。

「JF中小型株オープン」の組入銘柄の特徴は?

太田SPM:

長期的な利益成長企業を見つけるため、「新規事業」、「正しいM&A」、「ニュービジネス」、「値上げ力」、「全国制覇・世界制覇」、「リストラクチャリング(事業再構築)」、「シクリカル モメンタム」(※2)などのテーマで投資を行います。

「JF中小型株オープン」の組入銘柄には、東証一部上場のオールドエコノミー企業(※3)もあり、このファンドの特徴になっています。例えば、「値上げ力」をテーマに組み入れた東証一部の造船企業は、名前を聞くと小型株とは思えないような銘柄ですが、時価総額が5000億円未満のため小型株の範ちゅうとして取り扱っています。造船業界は06年の中間期を境に、赤字だった造船部門が黒字転換しました。船は受注してから売り上げを計上するまでのタイムラグが3年程あります。05年、06年前半までの業績は、非常に需要がなく安値受注しないと契約が取れなかったときの数字です。そのため、今後発注が伸びて値上げが可能になると、3年後4年後には経常利益が大きく伸びると考えられます。

なお、当ファンドの約7割が東証一部銘柄ですが、これは、元々ジャスダックなど新興市場に上場されていた銘柄が成長し、上場先を鞍替えした結果です。中小型株ということで見れば、市場には必ずしもこだわる必要はありません。


(※2)「シクリカル モメンタム」では、業績が景気動向に左右されやすい企業に、相場の強い局面のみ投資します。

(※3)オールドエコノミー企業とは、一般的にニューエコノミー企業(IT、インターネット関連など)に対し、従来の伝統産業や政府の庇護の下にある規制産業などを指します。

(参考情報)「JF中小型株オープン」の組入上位10銘柄(全組入柄数:94)

順位 銘柄名 市場 業種 組入比率(%)
1 日立建機 東証一部 機械 3.3
2 オークマ 東証一部 機械 3.1
3 ゼンショー 東証一部 小売業 2.6
4 アーク ジャスダック その他製品 2.5
5 アセット・マネジャーズ ヘラクレス サービス業 2.4
6 イビデン 東証一部 電気機器 2.3
7 昭栄 東証一部 不動産業 2.3
8 大塚商会 東証一部 情報・通信業 2.2
9 スギ薬局 東証一部 小売業 2.2
10 アーバンコーポレイション 東証一部 不動産業 2.2
※データは2006年12月29日時点

リスクの高い企業の見極め方は?

太田SPM:

いい銘柄を見つける以上に大事なことは、リスクの高い銘柄を保有しないことです。つまり、傷口をふさがないとせっかく貯めた投資成果を吐き出してしまうことになります。

私達が重視しているのは、直接経営者に会って話を聞くことです。彼らの話はとかくバラ色になりがちですが、内容が矛盾していないか、主張に一貫性があるかなど、経営者の経営姿勢をきちんと確認します。また、再度会ったときには以前の面談記録と照らし合わせて、前回話していたことと違っていないか、違っていた場合は何故違っているのかを追求します。ここで答えられないようなトップがいる企業への投資は見送ります。

リスクの高い企業のパターン>

1. ビジネスモデルそのものが崩壊した企業
2. 甘い見通し、甘い予想を立てる企業
3. 間違った経営多角化、安易なM&Aを行う企業
4. 過去を忘れてもらうために社名変更する企業
5. 株主利益との利害相反を平気で行う企業
6. 瞬間的な好環境に現れる雨後の竹の子企業
7. IPO(新規上場)をゴールと見ている企業
8. 上場審査の甘い、一部の新興取引所に上場した企業

リスクの高い企業の一例です。

あるFC(フランチャイズ)ビジネス企業の経営者から、新しいTAX(税金)オフィス事業の話を聞きました。「今後の日本は個人が確定申告する時代が到来し、会計事務所をサポートする機会が増える。実際、米国では30年前から個人の確定申告が導入され、TAXオフィスをフランチャイズ展開して成功している企業がある。我が社はそれを見越して今年新たに100店舗オープンする」というのです。

一見非常に魅力的な話ですが、「じゃあ、1日の来客数は?」と聞くと、1店舗で1人か2人。これでは今後も商売になるとは思えません。話を鵜呑みにして、今期何店舗出店×加盟金で今後の収入を計算してしまうと、現実の数字とまったくかけ離れてしまいます。実際、この企業は取材して半年後に業績を大きく下方修正し、株価も約5分の1まで下落しました。

アナリストご出身ですが、ファンドマネージャーとの仕事の大きな違いは?

太田SPM:

以前はセルサイドのアナリストだったため、自分が推奨する銘柄のレポートを書いてバイサイドに紹介し、証券を購入してもらうまでが仕事でした。今はバイサイドに移り、証券を買ってからが仕事になったため、その点が根本的に違っています。

いずれにせよ一貫して中小型株に18年以上携わってきました。この市場をずっと見続けてきたことが運用における私の強みだと思っています。

(参考資料)

アナリスト :企業の調査・分析を行う人
セルサイド :販売側(証券会社など)
 販売側から企業調査を行うアナリストをセルサイドアナリストと呼ぶ。
バイサイド :購入側(運用会社など)
 企業調査の内容をファンドマネージャーに報告し、
 投資助言を行うアナリストをバイサイドアナリストと呼ぶ。
ファンドマネージャー :ファンドの運用(投資の意思決定)を行う人
トレーダー :投資対象の売買を行う人

投資家の皆さんへメッセージをお願いします。

太田SPM:

投資信託に限らず、ますます勉強しなければならない時代になりました。「投資するというのはどういうことか」を、今一度自分に問いかけた上で投資を行って欲しいと思います。

小型株は値動きが激しく短期保有だとリスクが高くなります。06年は株の信用取引をした個人投資家の評価損率がマイナス20%を超えました。大きな損害を被った投資家も少なくないようです。そのような結果になったのは、ご自分の投資姿勢に何か落とし穴がなかったですか?私達ファンドマネージャーも常に成功するとは限りませんが、様々な教訓を生かしながら運用を行っています。損をした方は、この教訓を今後ぜひ生かしてください。



一方、正直これだけ悪かった06年の中小型株市場ですが、当ファンドには06年の夏頃から急激に資金流入がありました。残高は06年7月末の428億円から07年1月末には909億円と半年で2倍以上増加し、国内追加型の中小型株投信の中で最大規模になりました。

今まで日本人投資家は、「高値で買って安値で売る」という投資パターンを繰り返していましたが、当ファンドに限っていえば、昨年はまったく違った投資行動が起こったのです。これは特筆すべきことです。過去の経験則では、叩き売られて株価が低迷しているときに購入し長期保有した場合に良いパフォーマンスが出ています。株式投資、投資信託いずれの場合にも、すぐに華々しい結果が出なくとも、「安く買って長期で持つ」というスタンスの投資家が、今後は育って欲しいと思います。


「JF中小型株オープン」の基準価額と残高の推移

基準価額分配金込み、2004年1月末を100として月次リターンを指数化した動き
※データは2007年1月末時点、QUICK・QBR


インタビュー:2007年2月 聞き手:QBR 笹倉友香子 (掲載日:2007年3月5日)


プロフィール
太田 忠(おおた ただし)氏

職歴

1988年 第一証券 入社
国際業務部であらゆる業種の小型株調査を6年半担当。
1994年 DBモルガン・グレンフェル・アセット・マネジメント(現:ドイチェ・アセット・マネジメント)
小型株チームファンドマネージャーとして調査および運用を担当
1997年 ジャーディン・フレミング証券
調査部 小型株チームでシニア・アナリストを担当
2001年 合併によりJ.P.モルガン証券に所属
小型株チームチームヘッド就任
2003年10月 J.P.モルガン・フレミング・アセット・マネジメント・ジャパン株式会社(現:JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社)
JFジャパン・ポートフォリオ・グループ
小型株式運用チーム シニア・ポートフォリオ・マネージャー
(現任)
アナリストとしての実績】
・ 日経アナリストランキング「中・小型株」部門:99年〜03年 1位
・ インスティテューショナル・インベスター誌「小型・店頭株」部門:99年〜03年 1位
・ エコノミスト誌アナリストランキング「店頭全般」部門:98年〜03年 1位
・ Greenwich Survey (米国の調査機関)「日本小型株」部門:98年〜03年 1位


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