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投信販売夏枯れせずに、8月の資金流入額は5千億円台を継続

――通貨選択型の運用資産額が5兆円を突破し日本株ファンド追い抜く。8月新規設定はインドネシア債券ファンドをはじめ小粒ながらも、既存の毎月分配型投信の旺盛な新規購入と解約の全般的な減少で資金流入は衰えず。

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資金流出入額ランキング――8月の追加型株式投信(ETFを除く) 
上位には通貨選択型が並び、首位は「野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(バスケット通貨選択型) 資源国通貨(毎月分配型) 」、「日興アシュモア新興国財産3分法ファンド毎月分配型(ブラジルレアル)」が2位。
運用会社別ランキング――8月の残高・残高増減・資金流入額
円高・株安で軒並み運用資産減となる中、旺盛な資金流入額を支えにして「新光投信」「レッグ・メイソン・アセット・マネジメント」「大和住銀投信投資顧問」などの運用資産残高は前月比で増加。

8月新規設定ファンドは異変とも言える小粒化。既存の毎月分配型ファンドの新規購入が衰えず、解約額の全般的な減少を受け、資金流入額は高水準を持続。既存ファンドの解約資金を元手にしていない新たな個人マネーが投信市場に継続流入。

ETFを除く追加型株式ファンド(投資信託)への8月の資金流入額は約5470億円となり、お盆や夏休みの影響がほとんど無かったかのような個人マネーの集まり方だ。毎月分配型ファンドが主役であることに変化はなく、毎月分配型全体への資金流入額は約6900億円だった。さらに、実質的な運用通貨を投資対象国とは別の通貨や通貨バスケットに切り替えるファンドを複数揃えた“通貨選択型ファンド”への資金流入に弾みがついている。多くの通貨選択型ファンドは、収益にプラスされる為替ヘッジプレミアムの仕組みを活用して高分配を実現している。通貨選択型ファンドだけで合計4200億円の資金を集めた。通貨選択型ファンドにはこの1年間に月平均で3100億円あまりの資金流入が継続した。

異変が起こったのが、新規設定ファンドの小粒化。資金流入額上位30位内に入ったのは、流入額約113億円(23位)の「ダイワ人民元フォーカス株式ファンド(限定追加型)」(大和投資信託)1本のみというまれにみる少なさ。それでも、トータルの資金流入額がさほど減っていないのは解約額の全般的縮小が背景にある。5月頃から既存ファンドからの解約額がそれまでの1年間に比べ減少してきている。投信を新たに買う個人マネーが継続的に流入しているのと並行して、保有ファンドの解約資金を元手にして新規設定ファンドに乗り換える動きが鈍ってきた構図が浮かび上がる。

資金流入額首位は野村アセットマネジメントが4月に設定した「野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(バスケット通貨選択型) 資源国通貨コース(毎月分配型)」(野村アセットマネジメント)。約1520億円の資金を積み増し、8月末運用資産残高は6785億円まで成長。野村アセットマネジメントで最大規模のファンドに躍り出た。「野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(バスケット通貨選択型) 資源国通貨コース(毎月分配型)」の分配金(1万口あたり、税引き前)は6月以降、140円が続いている。

流入額第2位は2月に日興アセットマネジメントが投入した「日興アシュモア新興国財産3分法ファンド毎月分配型(ブラジルレアルコース)」の約670億円。9月に入り運用残高は千億円を超した。複数の資産に分散投資する資産分散型ファンドでは初めての通貨選択型。7月末時点の月次運用レポートによると、3資産の組入比率は債券約61%、株式7%、不動産約24%。特色ある新興国が組入上位を占めているのも特徴の一つ。社債中心に投資している債券では、カザフスタン、アラブ首長国連邦、ウクライナ、ロシア、ブラジルが上位に並ぶ。不動産は不動産関連債券を中心に投資し、中国とメキシコで過半を占め、他には香港、サウジアラビア、ブラジルなど。株式の組入上位国は中国の比重が高く他に、台湾、ロシア、韓国、フィリピンが上位に入っている(データの出所はいずれも7月末月次運用レポート)。

日興アシュモア新興国財産3分法ファンド毎月分配型(ブラジルレアルコース)」の7月と8月の分配金(1万口あたり、税引き前)は190円だった。投資対象となる3資産の通貨はG7通貨であり、現在は低金利の米ドルを主体にして他はユーロなど。これを高金利のブラジル・レアルに切り替える為替ヘッジを行うことで、短期金利差相当の為替ヘッジプレミアムが分配原資として収益に上乗せになる。組み入れの新興国債券や不動産関連債券の利子収入と株式配当金を合わせたファンド全体の利回り(インカムゲイン)は8%弱。これを分配原資の基本として、9%の為替ヘッジプレミアムがプラスされる(データは7月末時点)。ただし、3資産のインカムゲインに為替ヘッジプレミアムが上乗せとなる分配原資の“2階建て構造”により高分配の実現が期待され、投資対象の値上がり益や為替差益を狙う一方で、高利回りの裏腹にある新興国債券の信用リスクなどを背景にした原資産の価格変動リスクは免れず、円相場の変動リスクは米ドル・円よりも変動幅が大きいブラジル・円に切り替わる。

通貨選択型ファンドの運用資産残高は5.2兆円超、日本株ファンドはインデックスファンドを含んで5兆円を割り込み、日本株ファンドの地盤沈下が浮き彫りに。

2009年1月には2千億円程度だった通貨選択型ファンドの運用資産残高はそれ以降、一本調子の拡大基調が続き、8月末残高は5.2兆円に達した(ファンド数は260本あまり)。残高最大の「野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(バスケット通貨選択型) 資源国通貨コース(毎月分配型)」に続き、8月末残高5278億円の「SMBC・日興ニューワールド債券ファンド(ブラジルレアル)」(三井住友アセットマネジメント)や残高4870億円の「三菱UFJ 新興国債券ファンド 通貨選択シリーズ ブラジルレアルコース(毎月分配型)」(三菱UFJ投信)など、大型ファンドがずらりと並ぶ。

一方、主に国内株で運用する日本株ファンド(インデックスファンドを含む、ETFは含まない)の残高は、日本株相場の低迷に加え、日本株アクティブ運用ファンドの全般的な解約に歯止めがかかっていないことから、5兆円を割り込み、8月末には4.3兆円程度まで漸減。遂に日本株ファンドの運用資産残高が通貨選択型ファンドに追い抜かれた。日本株ファンドの8月末残高上位をみても「フィデリティ・日本成長株・ファンド 」(フィデリティ投信)の2448億円、「さわかみファンド」(さわかみ投信)が2077億円、「インデックスファンド225 」(日興アセットマネジメント)は1876億円、「MHAM株式インデックスファンド225 」(みずほ投信投資顧問)が1363億円、「日経225ノーロードオープン」(DIAMアセットマネジメント)の1017億円など。いずれも通貨選択型の大型ファンドには及ばず、残高上位5本中3本が日経平均連動型のインデックスファンドという状況だ。ファンドの運用資産規模と運用成績の優劣には直接的な関連性は無いものの、日本株ファンドの残高縮小は日本株アクティブ運用の元気の無さを映しているかのようだ。

 

集計対象の追加型株式投信の投資対象は株式のみではなく、債券やREIT(不動産投資信託)、商品など様々であり、“株式投信”という名称は、元々税制上の区分体系に基づく。債券のみで運用する“公社債投信”とは税制が異なるという意味合いを持つが、ますます“株式投信”として名が体を表していないという状態になりつつある。

日本株アクティブ運用ファンドの運用成績は株式相場の上昇局面では株価指数に勝ち、下落局面では負けやすいという一般的な傾向を持ち合わせている。この点を踏まえた上で、低コストのインデックスファンドが手軽に売買できるようになった以上、株価指数を継続的に上回るパフォーマンスを目指す日本株アクティブ運用への取り組み方について、運用会社からの具体的なメッセージが伝わってこないと、既存の日本株ファンドが活気づいて解約に歯止めがかかり、新規の日本株ファンドに大型の個人マネーを呼び込むのは難しい状況になってきたかもしれない。

インドネシア債券利子および株式配当金への源泉課税率は20%。ただインドネシア債券利子収入は課税後でも高利回りのため、債券利子収入中心に分配する「HSBC インドネシア債券オープン(毎月決算型)」の想定分配見込み額は毎月50−70円。

個人マネーが新興国に向かう動きも強まっている。新興国の中でもかつてないほどに注目の的となってきたのが東南アジア。その一国、インドネシア共和国の債券に分散投資している新興国債券ファンドは少なくないが、こうした流れの中、インドネシア債券(主に国債と中央銀行債)のみで運用するファンドが登場。「HSBC インドネシア債券オープン(毎月決算型)」(HSBC投信)への資金流入額は約10億円だった。

かつてインドネシアでは独裁政権の長期化が汚職のまん延をもたらし、90年代後半のアジア通貨危機の際には経済が深刻な打撃を受けた。IMF(国際通貨基金)の支援を受けながら経済の立て直しを図ってきたインドネシアが、東南アジアの大国としてまさに興隆(エマージング)してきている。約2.5億人の国民の半数を1日2ドル以下で暮らす貧困層が占めているものの、政治の安定化とともに中間層の購買力が拡大し、経済成長が目覚ましいという。毎年の財政赤字もGDPの3%以下に抑えられ、公的債務の累計額が対GDP比で2000年の約90%から30%程度まで大きく改善。財政の健全化とともに、現在は投資不適格の現地通貨建て国債の格付けが将来的に投資適格に格上げされそうな期待感もインドネシア債券の投資妙味になっているようだ。リーマン・ショック前に遡るが、長期債格付けが投資適格に格上げされたことをきっかけに、外国人投資家の資金流入が加速し始め、債券相場が上昇し通貨レアルが一段高になったというブラジルでの経緯を連想させる。

海外の債券や株式、REITなどに投資した場合、その利子収入や配当金などのインカムゲインについては非課税の場合を除き、投資国で源泉課税徴収される。しかも今年から税制上の取り決めにより、非上場の国内公募株式投信が源泉課税額を取り戻すことは原則できなくなった。このファンドに限らないが、「インドネシア債券の利子収入および株式配当金に対しては現在20%源泉課税される」(HSBC投信)ので、その分だけ分配原資は減ることになる。

ただ、インドネシア債券の利子収入は元々高利回りのため、源泉課税徴収後でもなお高い。「HSBC インドネシア債券オープン(毎月決算型)」運用開始前のモデルポートフォリオでの組入債券の年間利子収入を債券時価で割った平均直接利回りは、源泉課税前が10%弱で課税後は8%弱。これからファンドの信託報酬(税込み年率:1.6275%)を主とする運用経費を控除した額が分配金に回る。HSBC投信によると、毎月の分配金見込み額は50−70円(1万口あたり、税引き前)を想定している(初分配は11月決算からを予定)。この分配金水準は、債券の値上がり益や為替差益など基準価額に含まれる過去からの繰り越し分配原資を取り崩して分配金に充てるのではなく、あくまで組入債券の利子収入(源泉課税後および運用経費控除後)を中心とした分配を行うという、安定的でより健全な分配金の継続を想定したものとなる。

HSBC インドネシア債券オープン(毎月決算型)」では30年債など残存期間の長い超長期国債も組み入れ、モデルポートフォリオの債券平均残存期間は11年を超す。金利変動リスクの大きさを示す指標のデュレーションは6年程度と一般的な先進国債券ファンドとさほど差はないが、金利水準が高いだけに、金利上下時の振幅は大きくなり、金利上下に伴う組入債券価格の変動幅が目立ってくる可能性がある。インドネシア中央銀行はインフレ抑制を目的に最近、市中銀行から預かる資金の比率(預金準備率)を現行の5%から8%に大幅に引き上げる金融引き締め策を決定した。「これは政策金利引き上げに向けての事前の措置として、早期の利上げを示唆しているものとみられる」(HSBC投信)との見方もある。一般に、政策金利の引き上げはファンドで既に保有している債券価格のマイナス要因になるので、政策金利(現在6.5%)の動向は要注視点となる。

 

一方、利上げは通貨高の材料になりやすい。ただ、インドネシア・ルピアに対する円相場の価格変動リスクを過去5年間で計測すると、対ブラジル・レアルの円相場よりも小さかったが、米ドル・円の1.5倍程度で、ユーロ・円に比べるとやや大きかった。円安・円高どちらに振れるにしても、インドネシア・ルピア円相場の変動幅は大きくなりがちなのも注意点だ。また、インドネシア債券の利子収入に対する源泉課税率(現在20%)は将来増減する可能性がある。外国人投資家の資金流入が過熱化しルピア高が過度に進行すると、資本規制の一環で、源泉課税率がさらに上がるような税制変更のリスクもある。

 

執筆:QBR 高瀬浩(掲載日:2010年09月09日)

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