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投信フォーカス

毎月分配型の国内REITファンドにじわり資金回帰

――国内REIT指数は株安・円高に逆高し年初来では底堅い上昇。バークレイズ・キャピタル証券では強気判断。価格変動も本来のミドルリスクに低下傾向。「REITファンドの高分配≠組み入れREIT高配当」には注意。

海外REITファンドへの資金流入額の大きさに隠れて目立たないが、国内REITファンドへの資金流入超過状態が1年以上続いている。

個人マネーがJ−REIT(国内不動産投資信託)を組み入れて運用するファンドに回帰してきた。資金流入額の大きさこそ、海外REIT(不動産投資信託)ファンドや外債ファンドの影に隠れ目立たないが、2009年5月頃から資金流入超過状態がじわりと続いている。純資産残高は合計で、海外REITファンドが2.9兆円弱、国内REITファンドが4千億円弱(8月27日時点)まで回復してきた。

 

REITで運用するファンドについて、今年に入ってからの資金流入額のランキングを作成すると上位15本はすべて毎月分配型。ランキング上位は海外REITで運用するファンドが占め、4位までは優に千億円以上の資金が集まった。「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」(フィデリティ投信)、「ダイワ・グローバルREITオープン(毎月分配型)<愛称:世界の街並み>」(大和投資信託)、「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」(日興アセットマネジメント)、「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」(国際投信投資顧問)などだ。

海外REITファンドの後を追うように、国内REITで運用する毎月分配型ファンドへの資金流入も活発化してきた。「DIAM J-REITオープン(毎月決算コース)<愛称:オーナーズ・インカム>」(DIAMアセットマネジメント)は、6月に分配金(1万口あたり、税引き前)をそれまでの80円から100円に増額、翌7月には300億円の資金を一気に集め、新規販売を一時停止した。国内REITファンドでは「新光J−REITオープン」(新光投信)や「住信 J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」(住信アセットマネジメント)などへの資金流入も目に付く。

 
 

国内REIT指数は年初来で約5%上昇し、国内REITファンドの分配金込み基準価額も上昇。資金流入額上位の海外REITファンドの分配金込み基準価額は円高で下落。高額分配した分、海外・国内ともに上位ファンドの分配金を含まない基準価額は年初来で下落。

海外REITファンド同様の高めの分配金が国内REITファンドへの資金を引き寄せているとみられるが、円高の悪影響を直接的には受けないJ−REIT市場の底堅い値動きに注目する投資家が増えてきたのかもしれない。今年に入り、日経平均が8月27日まで約15%下落したのに対し、東証REIT市場の平均的な動きを示す「東証REIT指数(配当込み)」は5%弱の逆行高を演じている。

 
 

この結果、資金流入額上位ファンドを見ても海外REITファンドでは円高が響き、8月27日までの年初来の分配金込み基準価額の騰落率が軒並みマイナスとなったのに対し、国内REITファンドの方は3−5%台のプラス。

一方、年初来の分配金合計を昨年末基準価額で割った分配金利回り(年率換算せず)を計算すると、ランキング上位の海外REITファンドでは11%前後が目立つのに対し、国内REITファンドは8%前後が多い。海外REITファンドの年初来騰落率が分配金込みでマイナスになったということは、分配金を含まない基準価額自体の年初来騰落率は分配金を出した分、さらにマイナス幅が広がっている。例えば「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」の場合、分配金込みの年初来騰落率がマイナス0.1%、分配金利回りは11.9%、分配金を含まない基準価額の年初来騰落率はマイナス11.5%だった。ランキング上位に入った国内REITファンドの基準価額も分配金を出した分、年初来ではすべて下落している。

組み入れREITの配当金がファンド分配金原資に占める割合は、ランキング上位の海外REITファンドで2割程度以下、国内REITファンドで半分程度以下。REITファンドの高分配はこれまで蓄積してきた値上がり益に支えられている面が大きい。

REITファンドの高分配については注意点がある。「高分配なのは組み入れREITの配当金が高いから」という訳ではなく、安定的インカムゲインのREIT配当金では足りない多くを、基準価額に含まれるREITの値上がり益などを取り崩して分配原資に回しているケースが目立つ。

海外REITファンドの分配金が国内REITファンドより高めという点についても、海外REITの配当利回りが国内REITに比べ特段高くはない。一例として、「ダイワ・グローバルREITオープン(毎月分配型)<愛称:世界の街並み>」の組み入れREITの平均配当利回りは現地源泉課税前で4.9%(7月末時点)。組み入れの半分を占める米国REITの配当金は日米租税条約に基づき米国で現在10%源泉課税され、ファンドがこれを取り戻すことはできない。これに対し「住信 J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」の組み入れREITの予想平均配当利回りは5.89%(7月末)。ファンド段階で国内REITの配当金には源泉課税されないことを考慮すると、組み入れREITの配当利回りは現在、国内REITファンドの方が先進国に投資する一般的な海外REITファンドに比べむしろ高い状況にある。

実際、半年間の分配金合計に占める組み入れREITの配当金(運用経費控除後)の割合について運用報告書などを基に概算で調べてみると、公開資料を基にしているためデータがやや古く集計時期も異なるが、「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」が約14%(2010年3月決算時点までの半年間)、「ダイワ・グローバルREITオープン(毎月分配型)<愛称:世界の街並み>」は約19%(2010年7月)、「ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)」も約19%(同1月)、「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)」が約20%(同6月)と、軒並み2割以下という状況だった。

これに対し、国内REITファンドでの組み入れREIT配当金の分配金に占める割合は「DIAM J-REITオープン(毎月決算コース)<愛称:オーナーズ・インカム> 」が約37%(同1月)、「新光J−REITオープン 」は約51%(同4月)、「住信 J−REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)」が約49%(同6月)と、海外REITファンドよりも割合が上がったが、それでも分配金のおおよそ半分程度以下。

分配金のうち組み入れREIT配当金で足りない分は、REITの値上がり益や為替差益を回し、それでも足りない分は過去から繰り越してきた分配原資を充当する。いずれも分配原資は基準価額の外にあるのではなく、基準価額の中に含まれている原資を取り崩すことになる。REIT配当金のようにインカムゲインとして安定的な分配原資ではないだけに、REIT市場の下落が長引いたり円高の進行で基準価額が下げ止まらないようだと、高分配が一転して減配に追い込まれる潜在的リスクがある。REITファンドの高分配はこの1−2年のREIT市場の好調さに支えられてきた面が大きい。

国内REIT市場はハイリスクから本来のミドルリスクへ。国内REITファンドの価格変動リスクも海外REITファンドに比べ1段階低い状況。

J−REIT市場の底堅い値動きを受け、J−REIT指数の価格変動リスク(ボラティリティ―)は日経平均を下回ってきた。2007年あたりからはJ−REIT指数の価格変動リスクが日経平均を上回り、J−REITはハイリスク商品に変質してしまったが、価格変動リスクの変動をグラフで追うと、ここにきて高配当利回りをベースにしたミドルリスク商品に戻ってきつつあるように見える。J−REIT市場の予想平均配当利回りは現在5%台後半で、東証1部株式の予想平均配当利回りの2%強や国内長期金利の1%前後を大幅に上回っている。

ファンドのリスク度を6段階に区分している「QUICKファンドリスク」を資金流入額上位ファンドについて見ても、海外REITファンドのリスク度は6段階で2番目に大きい「5」以上なのに対し、国内REITファンドのリスク度は1段階低い「4」となっている。

 
 

J−REIT市場は混沌から成長へ。国内不動産価格に下げ止まり感が見え不動産取引も回復傾向。J−REITの資金調達環境が好転し、配当金の減少リスクも限定的――バークレイズ・キャピタル証券アナリストの見方。

証券アナリストによるJ−REIT市場への強気判断も出始めている。バークレイズ・キャピタル証券で住宅・不動産・J−REIT業界を担当している橋本隆・マネージング・ディレクターは「J−REIT市場は混沌から新たな成長のステージへと移ってきた」と分析している。

「国内不動産価格は2007年のピークから30%前後下落しているものの、最近の取引では価格の下げ止まり感が見られる。J−REITの投資物件についても、都心のA級ビルから不動産価格がボトムアウトする可能性が高いと判断している。不動産価格の下げ止まり期待から不動産取引額は2009年第3四半期を底に回復に転じており、2010年第1四半期のJ−REIT関連の不動産売買額は約2千3百億円とリーマン・ショック前の水準に近い水準まで回復した。現在、B級オフィスや都心のレジデンスは過去の水準からみて魅力的な割安価格で取引されており、J−REIT資産価格の成長期待を提供するものと考える」(橋本氏)。

「2008年後半以降のJ−REIT価格下落の大きな要因はリーマン・ショック以後、銀行の融資がタイト化し、借入を返済するために安値での物件売却を余儀なくされ、結果的に売却損失を計上し収益性を大きく悪化させたことが挙げられる。ところが2009年後半以後、銀行の融資スタンスは改善してきており、新規のローンも実施されるようになっている。さらに2010年に入り、資産規模の大きいJ−REITが投資法人債の発行を再開してきており、増資や債券発行ともに資金調達環境は今年に入り大きく改善している」(橋本氏)。

「2009後半のJ−REIT市場の低迷の要因は景気悪化に伴う賃料減少や空室率上昇による配当金(分配金)の減少であったと考えられる。当社は今後のJ−REIT配当金の減少リスクは限定的であると判断しており、配当金の利回り水準の高さから現状のJ−REIT価格水準は全般に割安感が大きいと判断している」(橋本氏)。

橋本氏は、J−REITの価格変動リスクがハイリスクから本来のミドルリスクに戻ってきた背景を「J−REITの信用リスクが後退し、本来の利回り商品としての性格が見直されたことや、景気の変動や為替の影響によってボラティリティーが高まっている株式市場から資金がJ−REIT市場にシフトしたことなどが要因。またオフィス市況のボトムが見えてきたことでオフィスREITの配当金の減配リスクが小さくなったことも背景にある」と説明する。

ただREITは景気敏感株の側面を合わせもつ。橋本氏は、最近の日米景気減速懸念がJ−REIT市場に与える影響について「景気後退によって不動産市況の悪化が長引いたり、円高の進行によって企業業績が悪化したりして内需の回復に水を差すようなことにならなければ影響は小さいとみている。これまでのところJ−REIT市場に景気減速懸念の影響はあまり出ていないようだが、今後の動向には注視する必要がある」と指摘している。


執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2010年09月01日)

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