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投信ニューフェース東証ETF『マザーズ・コア上場投信』(シンプレクス)――東証マザーズ市場の代表15銘柄に投資。連動指数「東証マザーズCore」の価格変動リスクは15銘柄の平均リスクの3分の2に縮小。投信の基本=「ポートフォリオの銘柄分散投資によるリスク低減効果」のお手本。※以下、断り書きの無いデータはすべて2011年11月18日時点。
「マザーズ・コア上場投信」は千円程度の少額投資が可能。 11月29日、東証に新ETF「マザーズ・コア上場投信 (1563)」が上場する。「東証マザーズCore」指数の変動率への連動を目指すETFだ。「東証マザーズCore」指数は国内新興株式市場である東証マザーズ市場を代表する15銘柄で構成する。 「マザーズ・コア上場投信 (1563) 」を運用するのは、「JASDAQ−TOP20上場投信 (1551) 」を昨年12月から運用しているシンプレクス・アセット・マネジメント。「JASDAQ−TOP20上場投信 (1551) 」は、同じく国内新興株式市場のジャスダック市場の20銘柄で構成する指数「JASDAQ−TOP20」の変動率への連動を目指す。「マザーズ・コア上場投信 (1563) 」の運用資産規模の上限は現在50億円。決算は年1回(7月)で、組入銘柄の配当金から運用経費を控除した全額が分配される。両ETFは共に指数採用の現物株を指数構成通りに組み入れて運用するのが基本形なので、ETFの基準価額の変動は指数との連動性が高い。両ETFの主な運用コストとなる信託報酬は年0.525%以内(税込み)で同じ。 「マザーズ・コア上場投信 (1563) 」は信用取引による売りと買いも可能。売買単位は1口で、現在の指数値の水準だと最低売買価格は千円程度。この現在の最低売買価格は、売買単位が10口となっている「JASDAQ−TOP20上場投信 (1551) 」の十一分の一程度まで下がる。また「東証マザーズCore」指数の組入15銘柄を最低売買価格で買い揃えるには、現在約176万円必要。こうした少額投資が可能なのはETFのメリットの一つだ。 「マザーズ・コア上場投信 (1563) 」ETFの追加組成や株券への戻し(交換)に携わり、市場での流動性供給に深く関わる指定証券会社は現在、SMBC日興証券、シティグループ証券の2社。流動性次第では市場での約定価格と、シンプレクス・アセット・マネジメントが運用する投信としての値段(基準価額)の間に乖離(ずれ)が大きくなる可能性がある。特に、一般に意図しない値段で約定する場合のある成り行き注文では、乖離する傾向が高まるので注意が必要。 ただETFの特性として、ETFの市場約定価格と基準価額との乖離幅が広がると、サヤ取りの裁定取引の機会が生じ、中長期には乖離幅が縮小する方向に動く原理がある。実際、「JASDAQ−TOP20上場投信 (1551) 」の市場終値(11月18日時点)を昨年末と比較すると32.6%の下落。基準価額は33%下落、連動指数「JASDAQ−TOP20」は33.3%の下落となり、ETFの信託報酬、0.525%以内(税込み)を考慮してもほぼ同じ程度の騰落率だった。なお「JASDAQ−TOP20上場投信 (1551) 」は今年7月に5.8円(1口当たり)の分配金(約半年分)を出している。 シンプレクス・アセット・マネジメントのETFサイト:http://www.simplexasset.com/jp/etf/top/index.html
連動指数の「東証マザーズCore」は東証マザーズ上場15銘柄で構成し、時価総額や売買代金などを基に選定。指数計算方法は大証「JASDAQ−TOP20」同様の売買単位換算での等株数型。「株価×売買単位」が大きいほど組入比率が高くなり、指数への影響度が増す。 連動対象指数の「東証マザーズCore」は東証が独自に、時価総額や売買代金、利益、配当状況などを基に15銘柄を選定。上場廃止や東証1部・2部への市場鞍替えに伴う補充以外には、銘柄の定期見直しは行わない。東証マザーズ市場には現在180銘柄程が上場しており、合計時価総額は約1.2兆円(平均70億円弱)。指数選定の15銘柄は数では全体の1割未満だが、時価総額は合計5千億円で全体の4割程度に達し、時価総額の点では東証マザーズ市場を代表する銘柄群と言えそうだ。 指数計算方法は大証「JASDAQ−TOP20」同様の売買単位換算での等株数型。「株価×売買単位」の合計を除数で割る修正株価平均型であり、TOPIXのような時価総額加重型ではなく、日経平均株価の計算方法に類似している。時価総額が小さく、売買流動性の低い銘柄が多い中小型株市場を代表する平均株価指数としては、銘柄を絞り込んだ修正株価平均の方が実運用に適している。ただ新興企業株の特徴の一つとして、企業価値向上に合わせ株式分割を行うことが多い。こうした株式分割時の指数連続性を維持するため、株式分割時には売買単位を分割数に合わせ修正し指数計算する。 15銘柄の中では「株価×売買単位」が大きいほど組入比率が高くなり、株価変動の指数への影響度が増す。現在、組入上位3銘柄は「ミクシィ (2121) 」(組入比率:16.0%)、「サイバー (4751) 」(組入比率:15.4%)、「フリービット (3843) 」(組入比率:11.2%)。採用銘柄の社名はカタカナ、英字名がほとんどであり、業種的には「JASDAQ−TOP20」採用銘柄に比べ、ITやネット関連の比重が高い。産業構造の変化を象徴しているとの見方もできそうだ。 「東証マザーズCore」指数は基準日の10月7日時点が1000(ポイント)であり、11月24日には945.87。算出開始1月半で5.4%安くなった。同じ期間で「JASDAQ−TOP20」はほぼ同じ5.5%下落した。 「東証マザーズCore」指数の値動きを「JASDAQ−TOP20」と比較。株価指数の中ではハイリスクの部類に入るが、15銘柄と少ないながらも複数銘柄分散投資によるリスク低減効果を実現。 「東証マザーズCore」指数は10月7日から算出が開始されたばかりで、値動きの傾向を分析するには十分な日数が経過していない。そこで、採用銘柄が現在と同じと仮定し同じ基準で過去に遡及した参考指数値を計算。「JASDAQ−TOP20」などの株価指数と比較してみた。比較期間は「JASDAQ−TOP20」の登場に合わせ、昨年10月末以降の約1年間とした。 この1年間では、3月の東日本大震災後の急落を挟み、「東証マザーズCore」参考値は10%下落。「JASDAQ−TOP20」は12.9%下落、「日経平均」は9%下落と大差なかった。一方、「東証マザーズ指数」は10.9%上昇した。こうした騰落率比較は計測期間を変えると様変わりすることがある点には注意が必要だ。
次に「東証マザーズCore」および「JASDAQ−TOP20」指数の採用銘柄の組入比率、騰落率、価格変動リスク、時価総額、1日当たり平均売買代金、PER、PBR、予想配当利回りを表にし、指数と比べてみる。表は組入比率順に並べた。 そうすると、70%近い下落と100%以上の上昇が入り混じる中で、「東証マザーズCore」参考指数は10%の下落にとどまった。特に価格変動リスクに目を向けると、「日経平均」が23%の水準にある中で、「東証マザーズCore」採用銘柄の価格変動リスクはすべてがその倍の46%以上で、採用銘柄の価格変動リスクの平均(単純平均、組入比率加重平均の双方)は60%弱だった。一方、「東証マザーズCore」の価格変動リスクは37%となり「JASDAQ−TOP20」とほぼ同じ水準だが、「日経平均」に比べハイリスク、「東証マザーズ指数」の約34%をやや上回った。ただ「東証マザーズCore」参考指数の価格変動リスクは、採用銘柄の価格変動リスクの平均値の3分の2程度まで縮小した。 これは、複数銘柄のポートフォリオを組むことにより価格変動リスクを低減することが可能、という投資信託の最大の特徴を教科書的に実現した例とみなせる。専門的には、採用銘柄間の値動きの連動性(相関係数)が低いので、ポートフォリオ全体の価格変動リスクを下げることができた。このように分散投資銘柄数が15銘柄と少なくても価格変動リスクを下げることは可能だ。これに対し、投資銘柄数が多いほど価格変動リスクが下がり続けるとは限らず、銘柄数を増やしても、ポートフォリオの価格変動リスクはある一定値以下には下がらない。
「JASDAQ−TOP20」と比べPERおよびPBRは高く、予想配当利回りは低い。平均時価総額は「JASDAQ−TOP20」の半分以下だが、平均売買代金は2倍以上。 「東証マザーズCore」指数の投資尺度としてのPER、PBR、予想配当利回りを「JASDAQ−TOP20」と比べてみると、PERとPBRは高く、予想配当利回りは低い。IT・ネット関連銘柄の集中度が高いことが関係しているとみられる。平均時価総額は545億円で「JASDAQ−TOP20」の1232億円の半分以下。一方、一日当たりの平均売買代金は12.9億円と、「JASDAQ−TOP20」の4.9億円の2倍以上。「東証マザーズCore」の採用銘柄の方が「JASDAQ−TOP20」採用銘柄よりも、売買が活発だったことを示す。 「価格変動リスク=標準偏差」のイメージを理解。価格変動リスクは値動きの不確実性の度合いを示す指標で、大きいほど上下にブレる確率が高い。 価格変動リスクは金融商品の値動きの不確実性の度合いを示す指標。値が大きいほど上下にブレる可能性が高く、より大きく儲かる可能性と大きく損する可能性が共存することになる。 価格変動リスクを統計的に定量化した指標が標準偏差。偏差とは乖離幅を指し、標準偏差は英語のStandard Deviationの直訳であり、何が標準で何を基準にした偏差か、言葉からは意味をつかみにくい専門用語だが、日々の騰落率の分布図を描くとその意味のイメージがより具体化する。 まず、グラフで昨年10月末以降の「東証マザーズCore」参考指数と組入比率が現在最大の「ミクシィ (2121) 」の値動きを比べてみる。「ミクシィ (2121) 」の方が、下落率は大きい。価格変動リスクを比べると「東証マザーズCore」参考指数の37%に対し、「ミクシィ (2121) 」は49.1%。「ミクシィ (2121) 」の下落は、価格変動リスクが大きい方が損する可能性も高くなる、ということに対応した下落とみなせる。
この価格変動リスクの実態を具体的にイメージするには、一定期間の騰落率の分布図を描くと分かる。標準偏差は1年間などのある期間における、日次や週次、月次などの一定間隔で計測した騰落率の集団について、その散らばり(バラツキ)度合いを平均からの乖離幅として示す尺度だ。グラフは「東証マザーズCore」参考指数と「ミクシィ (2121) 」について、その日次騰落率の度数分布を(1%刻み)で示したものであり、平均を中心とした裾野の広がり幅が標準偏差に相当。「ミクシィ (2121) 」の方が、裾野が広い分、「東証マザーズCore」参考指数に比べ価格変動リスクが高く、値動きのブレが大きいことになる。この裾野の広がり方を示す標準偏差(年率換算する前の日次騰落率ベース)は「東証マザーズCore」が2.3%、「ミクシィ (2121) 」は3.1%。日次騰落率の平均は共に0%近辺だった(注1)(注2)。
なお、東証と大証の経営統合が2013年に1月に予定されているが、経営統合に伴うマザーズとジャスダックの位置付けによっては、指数およびETFに何らかの変更が発生する可能性もある。投資にあたっては、経営統合による変更の有無に注目しておくのが重要になる。 (注1)標準偏差の年率換算
執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2011年11月28日)
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