|
|
投資信託 [ 注目の投信 ]ソーシャルブックマークに登録:
投信フォーカス期待インフレ率、デフレ下でも金融危機直前以来のプラス転換――期待インフレ率上昇と長期金利低下のダブル効果で物価連動国債ファンド堅調。「NIKKEI QUICK投信実力ランキング」長期評価2位で短期評価は1位。消費税アップを織り込みながら期待インフレ率上昇。物価連動国債の市場価格、利回り(実質金利)から逆算推計される「期待インフレ率(BEI:ブレーク・イーブン・インフレ率)」(注1)がわずかながらもプラスに転じた。日本相互証券が算出・公表している期待インフレ率は2月6日に0.8ベーシス・ポイント(0.008%)となり、2月10日の2.3ベーシス・ポイント(0.023%)までプラスで推移。プラス圏浮上は3年5ヵ月ぶりで、米リーマン・ブラザーズ証券が経営破綻した2008年9月15日の前日の4.8ベーシス・ポイント(0.048%)以来。 期待インフレ率は物価連動国債市場の需給関係にも左右されるが、理論的には物価連動国債価格のベースとなる「全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数=コアCPI)」の変化率(前年同月比)に対する市場予想値を反映しているとみなせる。期待インフレ率は2008年12月にマイナス3%超までマイナス幅を広げたが、それ以降はマイナス幅を縮小してきた。 この動きに沿うように、物価連動国債を組み入れて運用するファンドの基準価額は上昇基調をたどってきた。みずほ投信投資顧問が運用する「MHAM物価連動国債ファンド(愛称:未来予想)」と日本国債で運用するファンドの運用成績を比べてみると、物価連動国債ファンドの健闘ぶりが分かる。
「MHAM物価連動国債ファンド(愛称:未来予想)」の基準価額(分配金込み)は昨年末までの3年間で14.1%上昇。1年間では3.3%上昇した。2012年に入ってからの年初来上昇率(2月10日まで)は1.0%だった。これに対し、国内長期金利が低下する中、運用成績が堅調だった最大規模の国内債券ファンド「ダイワ日本国債ファンド(毎月分配型)」の基準価額(分配金込み)は3年間で5.1%、1年間で1.9%、年初来で0.1%上昇した。「MHAM物価連動国債ファンド(愛称:未来予想)」の値上がり方は、長期金利の低下と期待インフレ率の上昇、両方のプラス要因を受けたことになる。 さらに、両ファンドとも値動きは緩やかだった。日本を代表する株価指数であるTOPIXの価格変動リスクを「3」として、価格変動リスクを最小の「1」から最大「5*」の6段階に区分したリスク指標の「QUICKファンド・リスク」は、両ファンドとも最小水準の「1」(1月末時点)。 こうした運用成績の堅調さを受け、資金流入額と運用効率を基にランキングした「NIKKEI QUICK投信実力ランキング2011」の「国内債券部門」(注2)において、「MHAM物価連動国債ファンド(愛称:未来予想)」は長期評価(3年)で2位に入り、短期評価(1年)ではトップに立っている。「ダイワ日本国債ファンド(毎月分配型)」は「国内債券部門」短期評価で2位にランクインした。 最近の期待インフレ率の上昇要因について、みずほ投信投資顧問・債券運用部で運用を担当している西岡大貴・シニアファンドマネジャーは大きく2点を挙げる。「消費者物価指数(CPI)は税込み物価を集計する。最近の期待インフレ率上昇は消費税増税の実現性を織り込んできている。これに加え、物価連動国債は新規発行が現在停止中であり、そのうえで財務省による買入償却や日銀の買い取りが継続しているため需給関係が引き締まっている」(西岡氏)。 残存期間が最長の物価連動国債は2018年6月の約6年後に償還する。仮に政府・与党の現行案の通り、2015年中に消費税が10%まで引き上げられるとすると現在よりも5%アップすることになるので、消費税を含まない物価自体に変動がなくても、CPIは今後6年間で大まかな単純計算では、年率0.8%程度(=5%÷約6年)上昇することになる。期待インフレ率はこの消費税増税によるCPI上昇をじわり織り込みつつあるとみられる。ただ物価連動国債の利回り(実質金利)は期待インフレ率だけではなく、長期金利(名目金利)の変動の影響も受ける点には注意が必要。 物価連動国債の市場での取引は現在のところ活発ではない。こうした中、財務省は市場関係者を交え、物価連動国債の発行再開に向けて商品性などの検討を開始する。期待インフレ率のプラス転換で即、脱デフレとはいかないが、復興需要の本格化や世界的な寒波・異常気象による食品価格の値上がり圧力、イラン情勢を背景にした原油価格の強含みなど、CPIの押し上げ要因も顕在化しつつある。その意味でも、再発行となる物価連動国債の商品性や期待インフレ率の今後の動きは注目点になる。 (注1)期待インフレ率とは実際に起こった物価上昇率ではなく、市場が予測する今後最大10年間(現在は6年程度)の年平均物価上昇率を意味する。
執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2012年02月14日)
|