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投資信託 [ 注目の投信 ]ロシアが深刻な経済危機に陥ってからほぼ10年。プーチン大統領の強力な政治リーダーシップと、原油や天然ガスなど資源価格上昇の追い風を受け、ロシア経済は鮮やかに蘇った。膨らむ外貨準備高を背景にロシア政府系ファンドも台頭。今や、ロシアによる日本株買いの憶測も話題に上るほどだ。大和投資信託はロシア経済の成長を想定し、ロシア株で積極運用する『ダイワ・ロシア株ファンド』を新規投入。2008年2月26日に設定する。大和証券が販売し、最低購入額は10万円。実質的な運用は、ドイツ大手銀行のデカバンク・グループの資産運用部門であるデカ・インべストメント社に運用の再委託を行う。商品企画を手掛けた大和投資信託の米山章吾・商品企画部上席次長に、新投信の特色を聞いた。 「ダイワ・ロシア株ファンド」の投資テーマは。 ロシアというとまずは資源エネルギー大国のイメージが思い浮かぶかもしれないが、ロシア国内では消費を中心とした内需拡大に勢いがついてきた。例えば、モスクワの目抜き通りでは自動車の交通渋滞が当たり前のように起き、その中には高級日本車も目に付くようになった。生産設備の老朽化も進んでおり、更新需要による設備投資も広がり始めている。 当ファンドでは、消費関連、金融やインフラ、素材関連企業に重点投資する。ロシア経済の成長が今後も続くことを期待するファンドだ。実際、ロシア株の値動きを代表的株価指数であるRTS指数の業種別指数で比較すると、『金融』が約7倍に上昇し、『消費・小売り』は約3.5倍となった(08年1月下旬までの約3年間)。これに対し、『オイル・ガス』のエネルギー関連は2倍強となっており、内需関連企業の株価の堅調さが目立つ。 ロシア株運用をドイツで行う理由は。 ロシア、東欧やドイツなど欧州の運用会社、数社を再委託先候補として検討調査した。その結果、ドイツのデカ・インベストメント社を選定した。同社は、ロシア・東欧株と地中海地域の企業に投資する『コンバージェンス』と呼ばれるファンド(注1)の運用を01年から行っており、ロシア株運用の実績が豊富なことに加え、運用の好成績に対するS&P社の賞も受けている。『コンバージェンス』には『収れん』という意味があり、当該地域の経済が西欧にキャッチアップするというテーマで銘柄発掘するファンドだ。 広大なユーラシア大陸の中でも西側に位置する地域では、モスクワやサンプトペテルプルグといった大都市を中心に消費や投資が活発化してきている。ちょうど、ユーラシア大陸の左側を南北に縦断するウラル山脈の西側だ。シベリアやサハリンなど天然資源の宝庫はウラル山脈の東側に位置し、こちらがアジアや日本に近い。 ドイツなどの欧州国からみると、ロシアの西側はもはや欧州(ヨーロッパ)の一部という見方をするのも不自然ではないようだ。ドイツでロシア株を運用するのはこうした地理的な優位性も背景にある。 銘柄選別の手法は。 ボトムアップ方式による銘柄選別を行う。投資候補となる300社程度に対し、業績動向、流動性等により投資対象銘柄を決定した後、企業訪問とキャッシュフローを重視した企業分折を軸に組み入れ銘柄を絞り込んでいく。そのうえで、分散などを考慮し組み入れ比率を決める。ロシアの株式市場の時価総額をみると、エネルギー関連企業が上位を占める。当ファンドではエネルギー関連企業にも投資するが、その配分比率は市場平均よりも低めに抑え、素材、金融、通信や消費関連企業への注目度を高める。 ロシア株式市場の特殊性とは。 ロシア株を売買する市場はおおまかに3つある。(1)DR(預託証券、注2)と呼ぶ証券をニューヨークやロンドンの取引所で売買する市場がまずその一つ。発行企業は60社弱、該当する銘柄の株式時価総額は約1兆米ドル程度に達する(注3)。(2)RTS(ロシア取引システム)と呼ぶ外国人投資家が多く参加する市場もあり、発行企業は約300社、時価総額は約1兆3000億米ドル程度の市場規模だ。3つ目は、(3)MICEXといった取引所や、地方取引所などロシアの株式市場だ。 上記(1)のDRと(2)のRTSは米ドル建てで取引を行い、外国人が自由に売買できる。(3)のロシアの株式市場はロシア通貨のルーブル建てとなる。当ファンドはロシア株式市場の動きを十分に捉えることができるDRとRTSの株式に投資する。(1)のDRはロシアの主要銘柄が主体のため、組み入れ銘柄数でいうと(2)のRTSが中心となる可能性が高い。 当ファンドは為替ヘッジを行わない。米ドル建ての銘柄の取引が主体となると言っても、米ドル・円相場の影響を受けるのではなく、最終的にはルーブル・円相場の変動の影響を受ける。同じ銘柄であれば、米ドル建てとルーブル建ての株価は基本的には、どちらの通貨に換算しても同一価格となるよう取引されるからだ。 ロシア通貨ルーブルの特性は。 現在、ルーブルは米ドルとユーロの組み合わせ(バスケット)に連動している。米ドル55%、ユーロ45%の比率だ。将来、変動相場制に移行する動きもあるが、その際には、巨額な対外黒字を背景にルーブル高の方向に動く可能性が高いとみている。ただし、短期的で急激なルーブル高は、ロシアの輸出産業に与えるマイナスの影響が大きくなることから、ルーブル切り上げの動きをゆっくりとしたものとする政策対応がとられる可能性が高いと考えている。 新興国の中でもロシア株式市場の平均PER(株価収益率)が低めなのは、ロシアの政治リスクを織り込んだものとの見方があるが。 ロシア株式市場の平均PER(注4)は12倍弱と、中国やインドの20倍弱に比べ低く、PERでみると相対的に割安の水準にある。確かに、政治面などのリスク・プレミアムを意識しているかのようだ。ただし、08年3月に行われる大統領選挙後もプーチン現大統領の政治基盤は揺るがず、ロシア政府がこれまでの経済政策路線を継承するのは濃厚だ。海外資本流入の積極化など、資本主義化への志向が強まるとみられる。その結果、このリスク・プレミアムが剥落し、株価の割安度が改めてクローズアップされる可能性もあると考えている。 ロシアに限らず新興国全般では、エネルギーなどといった国の戦略産業に政府が何らかの関与をする動きは少なからずみられる。ロシアのカントリー・リスクは世界のエネルギー供給国の中では、むしろ低い部類に入るとみている。 ロシア経済は資本主義への道を進んでいるのか。 北方領土問題やサハリン沖での漁船拿捕など、ロシアに関してはネガティブな印象を持つ日本人も少なくないが、ロシアの政治体制は民主化の動きを強めているのが実情ではないか。資本主義の点で言えば、資本主義経済の条件として不可欠な『企業間の競争』と『金融取引での信用』の土台が整い始めたところだ。 以前は、政治と癒着して私腹を肥やした企業オーナーが珍しくなかったが、こうした政治と企業の癒着をプーチン大統領が排除してきている。市場経済の基本となるビジネス競争の環境も整いつつある。信用経済普及の点では、ローン利用による新車販売台数が全体の半分程度まで増えてきた(07年末)。トヨタ自動車がロシアでの自動車生産開始と同時に、自動車ローンを含む金融サービス事業を開始したのは、信用経済が普及してきている象徴的な例だ。 ただし、金融機関による貸出残高の対GDP(国内総生産)比率を他国と比べると、ロシアは約20%程度(05年末)で、日本の約300%程度はおろか、中国の約130%程度をも大きく下回っている。一見すれば金融システムの脆弱性と捉えられるが、国内経済の成長が明確になってきている現在、これはむしろ金融ビジネス拡大の余地の大きさを示している。当ファンドの投資テーマの一つである。 米国の景気後退リスクの影響をどうみるか。 ロシアの主な貿易の相手国は米国ではなく欧州などが中心だが、米国経済成長の減速がこうした国に及ぶ形でロシアにも景気減速が波及してくる恐れはある。ただ、FRB(米連邦準備理事会)の金利政策および米国政府の財政政策ともに迅速な対策が打ち出されており、楽観は禁物だがこれらの政策効果を期待したい。 原油価格が急落すると。 新興国での資源需要が旺盛なため、原油価格は当面高値圏で変動するとみている。ロシアでは原油価格のうち、1バーレルあたり27米ドルを超える部分の90%は財政に組み入れられる仕組みとなっている。仮に原油価格が急落するとこれまでのプラスの面が減じる動きにつながるものの、ロシアの多くの民間企業の経営にはさほど影響が出ないとみられる。 注意すべきリスク要因は。 ロシアのカントリー・リスクには注意して欲しい。資源価格の変動が外貨準備高に及ぼす影響や、政治不安、社会不安、他国との外交関係の悪化などが株式市場や為替市場に及ぼす影響は、先進国以上に大きくなる可能性がある。
(注1)ルクセンブルグ籍ファンド、運用資産規模は1000億円程度、07年末時点。
(注2)DR(預託証券):会社の株式を銀行に預託し、その代替として海外で発行される証券。 (注3)発行企業数は08年1月下旬時点、時価総額は07年末時点。 (注4)08年収益予想値に基づく。07年末時点。 インタビュー2008年2月 聞き手:QBR 高瀬 浩(掲載日:2008年2月22日)
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