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【第73回】投信フォーカス「マンAHLダイバーシファイド」
世界同時株安や円相場急伸という金融市場大混乱の中でも、異彩を放つ堅調な運用成績をあげ、存在感を急速に高めてきた運用手法がある。トレンド・フォロー(順張り)型と呼び、株価指数や商品先物、通貨など広範な金融商品を対象にコンピュータで値動きの方向性を解析し、相場の上げ・下げによらない収益を狙う運用手法だ。「マネージド・フューチャーズ」と呼ばれるヘッジファンド投資戦略の代表的手法として進化してきた。
(グラフ−1)「マンAHLダイバーシファイド」を組み入れているファンドの基準価額の動き
(注)QBR調べ。「ランドマーク」「マイルストーン」の売買が1週間間隔で可能となった2003年11月以降の月末値。直近は08年4月末。
「マンAHLダイバーシファイド」の投資対象は。 主に全世界の上場先物が対象だ。投資対象は年を追って増加しており、投資対象資産(銘柄)は08年3月末現在で160程度に及ぶ(図−1)。世界の先物市場が拡大し流動性が高まっており、今後も投資対象を拡げていく。最近では炭素排出権取引も対象に加わった。株式、債券、通貨、短期金利、エネルギー、金属、農産物などを中心に、主に流動性の高い先物取引市場で売買する。
(図−1)
「マンAHLダイバーシファイド」のトレンド・フォローの仕組みは。 トレンド・フォロー(トレンド追随型)の真髄とは、価格トレンド(値動きの方向性)をいち早く見つけ、その動きに乗ると同時に、一時的な変動に左右されず長期トレンドの最後までついていくことの間でバランスをとることにある。価格の割安・割高など妥当性や水準は一切関係ない。例えて言えば、NY原油先物の1バーレル=120ドル台が高すぎるのかそうではないかは判断しない。この先、上がるのか下がるのか、そのトレンドを見い出すことに全力をあげる。 過去の価格データによってトレンドを分析する。投資対象資産について、時間軸(1日から1年)を7つほど設定し、各期間のモメンタム(勢い)を主に分析する。過去何日かの高値や安値更新をシグナルとする、ブレークアウトと呼ばれる技法も使う。これら各期間の分析をAHL独自のアルゴリズムによって統合し、買い・売りのポジションを総合判定する。時々刻々と変化する価格に対応するため、コンピュータが一日24時間休みなく投資対象の全金融商品に対しこの処理を続け、数分毎に買い・売りポジションの積み増し、削減など、次々と指令を出していく。例えば、昨年夏以降の市場混乱期での収益は、株式セクターではなく、米ドル売りを中心とした通貨やエネルギー、農産物セクターからあげている。株式セクターはボラティリティー(リスク)が高かったため、空売りしていたもののポジションは小さかった。 コンピュータが出す診断結果をもとに、トレーダーが買いと売りの売買執行を行う。トレーダー業務は一日3交代のシフト勤務で、24時間取引体制をしいている。取引拠点はマン・インベストメンツのロンドン本社にあるが、非常時にはコンピュータの予備機への切り替えや自家発電による電力供給が瞬時に行われる。さらにロンドン市内と郊外にコンピューターとトレードシステムを完備したバックアップセンターを置き、万が一の場合でも取引を継続できるリスク管理体制をとっている。 各資産のリスクや、資産間、セクター間の相関性を考慮して、各セクターへの目標リスク配分を決める。このリスク配分を基準にコンピュータ・プログラムがセクター内の各銘柄のポジションを調整する。買い・売りの判断はコンピューターに任されるが、保有するポジションのリスクを常時監視し、潜在的なリスクが過大になったと判断した時には、リスクを抑えぎみとするようポジション調整する。また、各資産のボラティリティー(リスク)が上昇するとポジションを縮小するといった自動調整機能もプログラムに組み込んである。 トレーディングやコンピュータ・プログラム開発者の特色は。 コンピューターが買い・売りを判断してから、いかに迅速に、さらに、想定した価格からの乖離を極力抑えてトレーディング(取引)を執行できるかが極めて重要となる。世界の証券会社や銀行など80社以上とのネットワークを構築している。電子取引も多用し、売買執行コストの最小化には最大限の注意を払っている。 プログラムの改良は総勢40名の研究開発部門が行っている。多くのメンバーが数学や統計学、物理学などの博士号を有する『クオンツ』だ。金融工学の分野で世界的メッカの英オックスフォード大学との共同研究体制をとっており、最先端の金融技術がコンピュータ・プログラムに反映される。 「マンAHLダイバーシファイド」の長期の運用実績は。 AHLは1987年に運用を開始した。『AHLダイバーシファイド』で運用する商品は、1990年12月に運用を開始して以降、これまで約17年以上にわたる長期の運用実績がある。08年3月末までにドルベースで16.6倍に上昇。この間、代表的株価指数のMSCI世界株価指数は2.9倍、世界債券指数のシティグループ世界債券指数は3.4倍に上昇している(すべてドルベース)。年率換算すると、マンAHLダイバーシファイドは年17.6%、世界株価指数が6.3%、世界債券指数が7.3%だった。 人間の行動原理が変わらない限り、金融商品での価格トレンドが無くなることはないとみており、『マンAHLダイバーシファイド』の長期の運用成績はそれを実証していると考えている。こういう点でも、長期投資に適した手法であり、投資家の長期保有を前提とする『償還時元本確保型』ファンドとの親和性も高いと考えている。さらに、『マンAHLダイバーシファイド』の長期の値動きと株式や債券の値動きとの連動性(相関係数)は低く、資産の分散投資効果も発揮できるだろう。 『マンAHLダイバーシファイド』の08年3月末まで設定来の価格変動リスク(年率標準偏差)は16.3%。同期間の世界株価指数は12.9%、世界債券指数は3.0%だった(すべてドルベース)。値動きのブレ幅は大きく、ヘッジファンドの中でもハイリスク・ハイリターン型に属する。 金融市場の混乱期に強いのも特徴の一つ。1997年後半のアジア金融危機、98年のロシア危機や巨大ヘッジファンド破綻、2000年のITバブル崩壊や01年の米国同時多発テロ時など、世界の株式相場が大きく下げる中でいずれもプラスのリターンをあげてきた。金融市場が動揺した08年3月末まで半年間のリターンは、25.7%のプラスとなった(すべてドルベース)。 「マンAHLダイバーシファイド」の弱点や注意点は。 相場の先行きを予想するのではなく、価格のトレンドに追随していく運用手法のため、上昇トレンドから下落トレンド、下落トレンドから上昇トレンドへの急激な転換点では、すぐにはついていけず追随するまでに遅れが生じる。反対ポジションを構築するまでに損失を被ることが多い。またトレンドの無い状態、つまり、こう着状態のようなボックス圏を行き来するレンジ相場にも弱い。 実際、『マンAHLダイバーシファイド』の暦年での運用成績(ドルベース)をみると、1992年、94年、99年、04年は年間上昇率が2%前後にとどまった。大幅に上昇し続けるということはない。
(表−1)「マンAHLダイバーシファイド」を組み入れているファンドのリスク・リターン特性
(注)QBR調べ。データは2008年4月末時点。全期間は03年11月末との比較。08年は4月末まで。「ランドマーク」「マイルストーン」は月末時点での公表基準価額を採用、▲はマイナス(円高)。リスクは03年11月末〜08年4月末の月次騰落率を基に計算した標準偏差を年換算、大きいほど値動きのブレ幅が大きい。
(注1)「マンAHLダイバーシファイド」を組み入れている外国籍投信(現在購入可能、QBR調べ)
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インタビュー2008年5月 聞き手:QBR 高瀬浩(掲載日:2008年6月5日)
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