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【第96回】投信ニューフェース外国籍投信「ウィントン・パフォーマンス連動満期時元本確保型ファンド2(豪ドル建)」世界の金融市場に激震が走った今年は、多くのヘッジファンド運用が苦戦を強いられたが、プラスの収益を維持しているヘッジファンド運用手法もある。その一つが「マネージド・フューチャーズ(Managed Futures)」戦略と呼ばれ、相場の上昇時はもちろんのこと、下落時にも収益をあげることを目指す運用手法だ。マネージド・フューチャーズ戦略は、元々CTA(Commodity Trading Adviser)と称する商品投資顧問業者が、商品先物売買のテクニックとして編み出した手法だが、現在はヘッジファンドが運用の一手法として様々な金融商品の分散投資に適用。その投資対象は商品先物にとどまらず、株価指数先物や通貨先物(および為替予約取引)などに広がっている。 マネージド・フューチャーズ戦略は、コンピュータを活用して相場の変動を分析し、上昇・下落のトレンドを発見し、上昇時には買いを入れ、下落局面では売りに転じるのが基本だ。トレンドに追随する運用手法のため、「トレンド・フォロー(順張り)」型運用とも言う。一般に「うなぎのぼり」の上昇や「つるべ落とし」の下落には強い半面、上下一定レンジの幅をジグザク変動するような「こう着」状態の相場展開には弱い傾向がある。また、急騰の天井からの反落や底打ちから上昇基調への反転時には、すぐには追随できずトレンドに乗るまでに遅れが生じる。
英ウィントン・キャピタル・マネジメント・リミテッド(以下「ウィントン社(注1)」)は、このマネージド・フューチャーズ戦略を得意とする大手運用会社の一角を占め、運用資産規模は2008年9月末現在で約162億米ドルに及ぶ。
その旗艦ファンド(ウィントン・フューチャーズ・ファンド、以下「WFF」)は、1997年10月から11年超の運用実績を有する。この「WFF」と一貫性のあるリターンを生み出すことを目指して運用される「投資先ファンド」への実質的な投資機会を提供するのが、08年12月12日に設定される外国籍投信の『ウィントン・パフォーマンス連動満期時元本確保型ファンド2(豪ドル建)』(以下「ウィントン2」)だ。三菱UFJ証券、三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行が取り扱う。運用内容がほぼ同様の第一号ファンド(以下「ウィントン1」)が08年7月に設定されており、その運用資産規模は円換算で約640億円(注2)。
(図−1)「ウィントン社のマネージド・フューチャーズ戦略における主な投資対象」
「WFF」の運用成績(米ドルベース)をみると、08年10月末までの設定来約11年間は年換算で約19%上昇。07年は約18%上昇し、08年は10月末までに約13%の上昇。過去11年間で下落した年(暦年)は無かった。ただ、常に上昇し続ける訳ではなく、例えば原油価格が急落に転じた今年08年7月から9月末までの3ヵ月間には7.8%あまり下落している。この間、原油価格(NY原油先物、米ドル建て)が30%近く下落したのと比べると、小幅の下落だったと言えるが、万能の投資手法ではなく、元本割れの価格変動リスクが伴うことには注意したい。 ウィントン社によると、「WFF」の運用は金融市場の予想外のショックから立ち直るのも早かったという。米国同時多発テロが起こった2001年9月11日は1日で約11%(米ドルベース)急落したものの、翌取引営業日にはその半分以上を回復。結局、同年9月は約4.6%の上昇で終えたことを、一例として挙げる。また、今年08年9月の金融市場の大混乱時も約0.4%の月間下落率にとどまったとする。また金融危機の余波を受け各国で空売り規制が強化されているが、ウィントン社によれば、規制は現物株式を対象とし「WFF」の投資対象は金融先物・商品先物などのため、空売り規制の運用面での影響は無いという。 相場のトレンドと言っても、過去にトレンドがあったかどうかではなく、重要なのは「今」が上昇トレンドの中にあるのか、それとも下降に向かう最中なのか判別することだ。「WFF」の運用では、同じ銘柄(金融商品)でも相場変動に従い、買いと売りの比重が時々刻々と変動する。ウィントン社は、こうしたトレンド分析と売り買いの比重を瞬時に決定するコンピュータ上の数式モデルを開発。日夜、100人を超す研究者が数式モデルの改良に取り組んでいる。物理学や数学、統計学などの素養を有する金融工学のスペシャリスト集団だ。 いわばコンピュータがファンドマネジャーとなり売買の指示を次々に出して行く運用手法のため、コンピュータの正常稼働が生命線となる。バックアップシステムの完備や大規模停電への備えも怠りないようだ。実際の取引の執行は日曜夕方から金曜深夜まで、毎日24時間ノンストップで行う。取引執行の大半もコンピュータを介して電子化している。 今回、新規設定の「ウィントン2」は、当初元本の約3割を「パフォーマンス・リンク債」の購入にあてる見込みだ。ウィントン社の旗艦ファンド「WFF」と一貫性のあるリターンを生み出すことを目指して運用されている別ファンド(「投資先ファンド(注3)」と呼ぶ)がある。パフォーマンス・リンク債は、「WFF」ではなく投資先ファンドのパフォーマンスなどに連動して時価が変動する債券を指す。
パフォーマンス・リンク債は実質的な借り入れ効果により、投資先ファンドへの組み入れ比率をおよそ10週間かけて当初の約3割から100%程度まで上昇させることを目指す。この組み入れ比率は、好調時には最大で運用資産残高の150%まで膨らむ可能性があり、反対に不調の場合は0%になる可能性もある。 「ウィントン2」の当初元本(豪ドル建て)の残る約7割は安定運用部分として、期間中利息の支払いが無い「ゼロ・クーポン債(割引債)」を購入する。このゼロ・クーポン債の満期時における償還額は、当初元本相当額(豪ドル建て)である。満期時には当初元本(豪ドル建て)に、マネージド・フューチャーズ戦略による積極運用の成果(豪ドル建て)が上乗せとなる。これで、約9年半後の満期時まで「ウィントン2」を保有した場合には、仮に積極運用部分のパフォーマンス・リンク債の時価が最悪の場合ゼロとなっても、豪ドル建ての当初元本確保を提供する仕組みとなる。 「ウィントン1」では、満期までの期間が約6年半だったが、「ウィントン2」では約9年半に伸びた。豪州では景気悪化を受けて利下げが続き、豪州の政策金利は9月初の7.25%から11月の5.25%まで2ヵ月間で2%引き下げられた。それに対応して債券の利回りが低下し、ゼロ・クーポン債の時価が元本に届くまでの期間が長くなった。また「ウィントン2」においては、ゼロ・クーポン債が安全性の高いG7諸国の国債を担保とすることも期間が長くなったもう一つの要因のようだ。 注意したいのは、「ウィントン2」が直接投資する債券の信用リスクが「ウィントン2」の運用成績に影響する可能性がある点だ。例えば、パフォーマンス・リンク債の保証会社である、銀行持ち株会社の米「ザ・ゴールドマン・サックス・グループ・インク」(以下「GSG」)が経営危機に陥るような事態が生じると、投資先ファンドの運用成績とは無関係に、パフォーマンス・リンク債の時価が下落し「ウィントン2」の運用成績に響く可能性もある。また、安定運用部分のゼロ・クーポン債では安全性を高めるために、G7諸国の国債を担保にする仕組みを新たに導入しているが、この仕組みでもG7国債の発行体やGSGの信用リスクを完全には排除できず、元本毀損のリスクは残る。 最後に、「ウィントン2」のその他の特色ならびに注意点を列挙する。
執筆:QBR 高瀬浩(掲載日:2008年11月21日)
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