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中国・アジア新興国特集 [ 中国経済と投資のトピックス ]

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【第12回】

需要側から中国住宅事情を探る

中国では、公的住宅の実物分配制度から貨幣補助制度へ移行したことで住宅ブームに火がつき、本来借金の嫌いな中国人の意識が少しずつ変化を見せ始めている。そういった中、住宅取得が結婚する必須条件の一つという考え方が生まれ、広がりつつある。

住宅ローンの誕生

中国では1980年代に入り、?小平が住宅制度改革を掲げ、従来の公的住宅の実物分配制度からの方針転換を図った。その後、1998年に全国の都市部で公的住宅の実物分配制度が廃止され、貨幣補助制度への移行が始まったことで、本格的な住宅制度改革が訪れた。

現在、中国の住宅ローンには主に住宅公共積立金ローン、個人住宅組合せローン、個人住宅商業性ローンの3種類があり、主な内容は以下の通りとなっている。

・住宅公共積立金ローン:住宅公共積立金とは、国家機関や企業の在職従業員がそれぞれの賃金の一定比率を月ごとに納付して積み立てる長期預金のことである。納付率は全従業員の前年の平均月収の5%を下限とし、各都市が状況に応じて上限を定めた上で、企業がその範囲内で決めることとなる。この制度は国民の住宅購入を支援する政策的な意味合いのある融資であり、不動産購入を計画する人が、ローン手段として第一に考えるものである。政策上の優遇があるため、利率は同時期の商業銀行の貸付金利率はもとより、預金利率よりも低く設定されているほか、抵当や保険などの関連手続の支払い代金も半額となる。なお、金利は国の優遇政策を受けるため、政策に連動する変動金利タイプとなっている。

・個人住宅組合せローン:各都市の住宅公共積立金管理センターは借入金の上限額を定めており、仮に住宅の購入費がこの額を超えれば、不足部分を銀行にローン申請することになる。この上限内と不足分の二種のローンを合わせることを個人住宅組合せローンと呼ぶ。銀行の不動産貸付け部門で取り扱うことができ、利率も中程度であるほか、貸付金額が比較的大きいことから、利用者にとって利用しやすいものとなっている。

・個人住宅商業性ローン:いわゆる銀行担保貸付金のことである。貸付金銀行における預金残高が購入する住宅金額の30%よりも高く、かつそれを頭金として支払う場合について、銀行が認可する資産を抵当・担保として提出するか、十分な返済能力のある会社や個人を連帯責任の保証人とすることで、銀行担保貸付金を申請するものである。返済期間は最長30年であり、借入額は購入する住宅の70%までと定められているが、上限額は決められていない。金利タイプについては、固定金利と変動金利がある。

以上のいずれの住宅ローンについても、返済方法は元利均等返済方式(等額法)か元金均等返済方式(逓減法)になる。借入額や返済期間、金利が同じであれば、元金均等返済が総返済額は少なくなるが、銀行では元利均等返済がよく勧められる。

政策による影響

現在、不動産価格の高騰に対応するため、政府は不動産市場の調整に乗り出しており、2010年10月20日には人民銀行が2年10カ月ぶりの利上げに踏み切った。貸出金利は1年物が0.25%pt高い5.56%となり、5年以上は0.20%pt高い6.14%となった。これを受け、個人住宅公共積立金の預金利率は1.71%から1.91%へ、5年期以下(5年含み)の貸付金年利率は3.33%から3.50%へ引き上げられ、5年期以上の貸付金年利率は3.87%から4.05%へ引き上げられることとなった。

また、投機目的の住宅取得を抑制するため、政府は住宅公共積立金の規制強化にも乗り出しており、11月からは2軒目の住宅取得について、頭金を購入価格の最低5割用意しなければならないとし、金利も1軒目の1.1倍以上が適用されることとになった。さらに3軒目の取得については、住宅公共積立金ローンの利用そのものが一時停止されている。また、1軒目の取得でも床面積が90平米以上の場合は、頭金を購入価格の最低3割にするなどの条件も加えられた。

住宅ローンは10年間で200数倍に

中国建設銀行は1992年に中国で第一号となる個人住宅抵当貸付金を出した。その後、個人住宅抵当貸付金は次第に不動産購入融資の主要な方式となり、市場規模は急速に拡大している。個人住宅ローンの推移を見ると、統計の始まった1997年には131億元であったが、その後は年々増加する傾向にあり、2008年末時点では2兆9,831億元と、2000年の9倍、1997年当初の228倍にまで達している。住宅金融制度の整備が進んだことにより、市場は急拡大し、住宅取得はブームの様相を呈し始めている。

中国人民銀行が発表した「2009年中国区域金融運行報告」によると、2009年末の全国個人住宅ローン残高は4兆4千億元と前年比47.9%の大幅な伸びになったとのことである。2009年の個人住宅ローンは累計で2兆2千億元発行され、707.1万軒の住宅購入を支援する結果となった。そのうち、新築と中古住宅はそれぞれ1兆6千億元と6千億元であった。通年住宅ローンの累計額は同期の住宅売上高の53.8%を占めるまでになっており、住宅ローンの利用が普及していることが確認できる。

また、同報告によると、個人住宅ローンの不良債券比率は低下傾向にあり、借款者返済能力はある程度強化されていることがうかがえる。2009年末の全国住宅ローン不良債権比率は0.60%であり、2008年末から0.62%pt低下した。また、20の重点都市を対象にサンプリング調査を実施したところ、2009年借款者の毎月返済額は月収の34.2%となり、2008年よりも1.1%pt低下した。不良債権比率が低下してきたことで、住宅ローンが銀行にとっても有力な収益源となってきていると言えそうだ。

 

結婚は不動産市場の強い支え役

このように住宅ローンが増え続ける背景の一つに、中国の結婚観が影響している。日本においても結婚を機に住宅を購入するというカップルが存在するが、中国ではマイホームを準備してから結婚するという考えが非常に深く浸透している。捜房が発表した2010年のインターネット調査によると、男性の41.3%、女性の51.0%が住宅取得は結婚するための前提条件であるとしている。そのため、「住宅を買えないから、結婚できない」と考える男性も少なくない。

中国では、新郎新婦の結婚初日に親類・友人が新居におしかけ、二人を祝福するという風習があり、新居を用意しておくことが結婚式の準備の一部になっているという面もある。現在、結婚のために住宅を取得しようとしている多くの人は、「80后(パーリンホウ)」だと言われる。「80后」とは、1980年以降に生まれた世代のことを指しており、まだ働き出して日も浅い。そのため、手元の貯蓄が少ないが、そうした中でも結婚用の新居を購入するという意識が非常に高く、住宅ローンの利用を広める一因となっている。

新婚姻法は新たな住宅重要に繋がるか

2010年11月に、中国の最高裁判所は「『中華人民共和国婚姻法』に関する若干問題の解釈(三)」を公布した。その中で、第八条は「婚姻後に片方の両親が出資し購入した不動産が、出資者子女名義で登記された場合、自身子女に対する贈与と見なし、当該不動産は夫婦の片方の個人財産になると認定すべきである」と規定している。また、第十一条は「夫婦の片方が婚前に不動産売買契約を結んだ場合、個人の財産で頭金を支払い、かつ住宅ローンを組み、婚姻後に不動産登記は頭金支払い者の名義となった場合、離婚時に当該不動産が不動産権利人の個人財産になると認定することができ、未払い分に関しては不動産権利人の個人債務になる」と規定している。これらの解釈が公布されたのは、離婚率が高まる中、不動産という財産トラブルが多く発生しているという背景がある。

これまでは住宅を買わない男性は、相手の母親から結婚を許してもらえず、母親の男性への住宅取得圧力が不動産市場の下支え役の一つにもなっていた。一人っ子政策の下で大事に育てられてきた子供たちは今ちょうど結婚適齢期を迎える時期に差し掛かっており、今後は親たちが自分たちの娘に住宅を一軒準備しておくという動きが出てくる可能性もある。

新婚姻法が不動産の新しい需要に繋がるかどうかはともかく、結婚のため住宅を取得しようとする「80后(パーリンホウ)」がたくさんいるのは事実だ。彼らの上の世代の中国人は、節約生活が染みついた消費スタイルで、借金が嫌いという意識を持っていた。しかし、経済成長とともに、収入が日に日に増える「80后」は消費文化やローンといった新しい消費スタイルが染みついていることに加え、目先では結婚のための住宅取得の必要性に迫られている。中国の不動産市場はこのような「80后」の結婚需要にも支えられ、当面は大きく崩れることはなさそうだ。


執筆:株式会社ニーズ 董氷(掲載日:2011年01月28日)

プロフィール : 董 氷  とう ひょう
株式会社 ニーズ キャピタルデザイン エコノミスト
2002年来日。2007年北海道大学法学部卒業、同年第一生命保険相互会社に入社、同5月第一生命経済研究所に出向、中国経済担当エコノミスト。Bloomberg TV中国経済コメンテーター。日本経済新聞、週刊東洋経済、モーニングスター、株式新聞などのメディアへの寄稿多数。

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