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中国・アジア新興国特集 [ 中国環境ビジネス ]

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【第4回】

新たな成長へ!新段階を迎えた中国の太陽光発電産業

世界最大の太陽電池生産国となった中国はいま、太陽光発電の導入にピッチを上げている。中国政府は09年3月、建物を対象とした太陽光発電の利用促進策、7月には主原料生産から送配電まで支援する「金太陽プロジェクト」を打ち出した。政府の政策に後押しされた太陽光発電の内需拡大をきっかけに、今後中国国内における太陽光発電の本格的な普及に弾みがつきそうだ。

世界最大規模の「太陽電池」生産国

1990年代後半以降、温室効果ガス削減への対応や、技術進歩、各国政府の導入促進策を受け、世界の太陽光発電は急速な発展を遂げている。世界の太陽電池生産量は97年の126メガワット(MW)から、2008年は6,941MWへと、年平均約40%で増加している。特にここ数年中国の急増ぶりが際立つ。07年の生産量は前年比293%増の1,200MW、08年は約50%増の1,787MWと、世界最大の生産国に躍り出た。

太陽光発電システムの生産フローは、素材(主に結晶シリコン)→シリコンインゴット→シリコンウエハー→太陽電池セル→太陽電池モジュール→発電システムとなっており、川上に行くほど技術集約度が高い。現在中国では、シリコンインゴットとウエハーのメーカーが約70社、太陽電池セルのメーカーが約50社であるのに対し、比較的簡単なモジュール工程には数百社が参入している。メーカーの多くは沿海の江蘇省に集約しており、同省の太陽電池生産量は全国の60〜70%を占める。

太陽電池産業の急成長は、中国国内に新たな富豪を生み出した。中国の富豪ランキングとして知られている、英国人フージワーフ(中国語名:胡潤)氏による2008年版中国長者番付「胡潤百富榜」では、2001年に設立されたサンテックパワー社を僅か数年で中国最大、世界第3位(08年シェア7.2%)の太陽電池メーカーに育て上げた施正栄氏が資産額215億元(約3,000億円)で8位にランクイン。また中国最大の太陽電池向けシリコンウエハーメーカーである江西賽維LDK社を率いる彭小峰氏は270億元(約3,780億円)で同番付の4位となっている。

太陽電池の生産フロー
太陽電池の生産フロー
(出所)海通証券

2008年の世界の太陽電池生産量
2008年の世界の太陽電池生産量
(出所)PV News(2009.4)、資源エネルギー庁新エネルギー対策課(2009.6.25)

成長が期待される中国の太陽光発電市場

太陽電池の生産ではすでに世界最大規模のシェアとなった中国であるが、生産量の約98%は海外に輸出されており、国内需要は生産の約2%にとどまっている。中国政府の太陽光発電の普及に対する取り組みは、97年の国家プロジェクト「光明工程」(新エネルギーの開発利用を通じ内陸地域に電力を供給する)の実施から始まった。02〜05年の間、中国政府は「送電到郷」(農村に電力を送る)政策を打ち出し、小型太陽光発電システムが農村部で普及し始めた。その後、06年の「再生可能エネルギー法」の施行、07年の「再生可能エネルギー中長期発展計画」の発表を受け、太陽光発電の普及がさらに進んだ。太陽光発電の導入量(設備容量)は06年の12MWから、07年の20MW、08年の45MWに急増し、08年末までの累計導入量は140MWに達している。ここ数年の中国の導入量は毎年ほぼ倍増しているが、世界全体に占めるシェアは1%未満であり、今後、成長の余地が極めて大きい市場と言える。

太陽光発電の導入容量
  2006
(MW)
シェア
(%)
2007
(MW)
シェア
(%)
2008
(MW)
シェア
(%)
ベルギー 2 0.1 18 0.8 48 0.9
チェコ 0 0.0 3 0.1 51 0.9
ドイツ 850 53.0 1,100 46.0 1,500 27.0
スペイン 88 5.5 560 23.4 2,511 45.2
イタリア 13 0.8 42 1.8 258 4.6
ギリシャ 1 0.1 2 0.1 11 0.2
フランス 8 0.5 11 0.5 46 0.8
ポルトガル 0 0.0 14 0.6 50 0.9
その他欧州 12 0.7 17 0.7 28 0.5
米国 145 9.0 207 8.7 342 6.2
中国 12 0.7 20 0.8 45 0.8
日本 287 17.9 210 8.8 230 4.1
韓国 20 1.2 43 1.8 274 4.9
インド 12 0.7 20 0.8 40 0.7
その他 153 9.5 125 5.2 126 2.3
世界計 1,603 100.0 2,392 100.0 5,559 100.0
(出所)EPIA

「金太陽プロジェクト」で太陽光発電の普及促進に弾み

中国で太陽光発電の普及の足かせになっている大きな要因は、高い発電コストである。これについて、09年に大きな転機があった。中国政府が普及促進に本腰を入れたのである。09年3月に、中国財政部等は「太陽光発電建築応用の加速に関する実施意見」と、「太陽光発電の建築応用の財政補助金の管理暫定弁法」を公布した。これは中国初の太陽光発電を特定な対象とした支援策で、普及に向けた重要な一歩と言える。具体的には、「太陽光発電屋根計画」の実施を通じて、太陽光屋根、建物一体型太陽光発電(BIPV)などに対し、財政補助金を給付し、特に転換効率の高い製品に対しては重点的に支援する(09年の補助金基準額は原則的に20元/w)内容となっている。現在、中国の太陽光発電のコストは1キロワット時(kWh)当たり 1.3〜2元で、一般の火力発電の0.30元/kWh未満を大きく上回っている。これに対し太陽光発電に対する政府の20元/wの補助金を加えると、発電コストは実質的に0.6〜0.9元/kWhとなり一般の火力発電のコストに大きく近づく。

さらに09年7月には、中国財政省、科学技術部、国家エネルギー局が共同で「金太陽モデルプロジェクト」という太陽光発電プロジェクトを発表した。主な内容は、太陽光発電プロジェクト向け投資に50%の補助金を支給するほか、高純度シリコンの生産や系統連係(送電網に太陽光発電をつなぐシステム)も支給対象となる。特に過疎地および未電力地域での独立型太陽光発電システムに対しては投資総額の70%の補助金が支給される。中国政府は今後2〜3年で500MW以上の太陽光発電の実験プロジェクトを立ち上げる計画である。金太陽プロジェクトが発表された後、多くの太陽光発電企業が申請に殺到しているという。

中国の一部大手証券会社の予測では、中国国内の2010、2011年、2012年の太陽光発電導入量についてそれぞれ400〜750MW、1,000〜1,500MW、1,500〜3,000MWと予測している。中国が太陽光発電の本格的な普及を迎える日が近づいている。

調整から新段階の成長へ

過去数年間、中国の太陽光発電産業は輸出主導で急速に台頭してきた。生産能力のあまりにも急ピッチな拡大、08年の金融危機ぼっ発による太陽電池需要の減退などに見舞われ、08年秋以降、中国の太陽電池業界は調整を余儀なくされている。一部の大手メーカーは四半期ベースで赤字を計上したほか、多くの中小・零細メーカーは倒産または生産停止に追い込まれた。幸い、足元では各国の景気対策が功を奏し、中国経済が一足先に回復に向かっており、世界経済も回復の兆しが見られる。

一方、中長期的な視点でみると、地球温暖化問題への対応や、化石燃料の消費削減、再生可能エネルギーの利用強化などは長い時間をかけて取り組んでいかなければならない課題である。中国の太陽光発電産業は、むしろ今回の調整を通じ、競争力のない会社が淘汰され、乱立気味だった業界の再編が促されることで、健全かつ効率的な産業に進化し、国内外の太陽光発電の次の成長の波に乗るきっかけになろう。

用語解説
【変換効率】
太陽電池に入射した太陽光エネルギーに対し、太陽電池から取り出せる電気的エネルギーのパーセンテージ(%)である。例えば、太陽電池に入射する太陽光エネルギーは1㎡当たり約1,000wで、太陽電池から取り出せるエネルギーは約150wである場合、変換効率は15%になる。

【系統連系】
太陽光発電システムを、電力会社の送電網に繋げる形態。太陽電池モジュール→パワーコンディショナー→商用電源という接続形態を取る。

株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員/李 粹蓉
(掲載日:2010年03月05日)


プロフィール
株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員
李 粹蓉  り すいよう Ri Suiyo
1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、 2007年野村アセットマネジメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度財務省委嘱「中国研究会」委員
 


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