勉強する・投資する

 

かば子

中国・アジア新興国特集 [ 中国環境ビジネス ]

ソーシャルブックマークに登録:
 

【第12回】

官民連携で中国の環境ビジネスに食い込む日系企業

中国では環境保全や省エネへの取り組みが加速している中、日本の優れた環境技術に対するニーズが高まっている。一方、急成長している中国の環境ビジネスにもっと食い込もうと、日本も官民双方が以前にもまして積極的に動き出している。最終回の今回は、中国の環境ビジネスへの参入を目指した日本の官民の動きを取り上げる。

中国の環境ビジネスで強みを発揮する日系企業

中国政府は2009年12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を前に、2020年までに国内総生産(GDP)1単位当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を2005年に比べて40〜45%削減する目標を発表した。この目標を達成するには、中国は今後、環境保全と省エネを一層進めなければならないが、その成否のカギを握るのは、環境技術やノウハウである。中国企業の中にも技術力でもって業界のリーディングカンパニーになったところもあるが、環境産業全般を見渡すと、技術力や人材が不足しており、価格競争を繰り広げている分野もある。先進国から技術やノウハウの導入は、中国の環境対策ひいては低炭素社会実現にとって必要なだけでなく、環境関連企業にとっても生き残るのに欠かせない。

環境先進国である日本は環境技術やノウハウの蓄積が豊富で、中国の環境対策においてその強みを存分に発揮できる可能性が大きい。特に、水処理、排煙処理、リサイクル処理、自動車向け燃料電池などの分野では日本企業にとってビジネスチャンスが大きい。

日中政府によるマッチング支援画

こうした中国側の需要と日本側の供給をマッチングしようと、近年、日中政府は支援強化に乗り出した。その目玉のひとつは、2007年 12 月の両国政府の「環境・エネルギー分野における協力推進に関する共同コミュニケ」の発表である。これを受け、日本貿易振興機構(ジェトロ)は2008年4月より、中国の事務所の中に「日中省エネ・環境協力相談窓口」を設置し、日中間の環境ビジネスのマッチング支援を行う。

また、共同コミュニケでは、日中官民一体の協力体制のプラットフォームとして「日中省エネ・環境総合フォーラム」の開催、「省エネ・環境ビジネス推進モデルプロジェクト」の実施が決定された。2009年11月8日に中国北京で開催された「第4回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」では、日中の政財界からそれぞれ約500名、あわせて1,000名を超える規模の参加者となり、過去最大となる42件のモデルプロジェクトに関する協力合意文書が調印された。プロジェクトの内容をみると、従来は沿海部の案件が中心だったが、内陸部で展開される案件が増え、また分野別では省エネや水処理に加え、リサイクルなど資源循環に関する案件が増えた。最近の中国の環境ビジネスの広がりを反映した内容と言えよう。

地域間交流も活発

そのほか、ジェトロの地域間交流支援事業(RIT事業)の一環として、日中の都市間で環境分野の交流事業も活発になっている。茨城県と上海市は水質浄化に関する新技術・新製品の共同研究開発を進めており、九州と大連市は連携して水処理などの分野でのビジネス交流を目指している。関西文化学術研究都市と北京市中関村科技園区との間では、太陽エネルギーの利用や水処理の分野で、新たなビジネスモデルの構築を目指す交流事業を進めている。

また、日本企業による中国の地方視察や地方での環境フォーラムの開催も行われている。第4回の北京の環境フォーラムに先立ち、日本の訪問団が重慶、唐山など中国の9都市を視察した。特に重慶では「重慶フォーラム」が開かれ、化学・ガス、石炭、汚泥処理などをテーマにした日本の専門家の発表や、重慶市企業との交流が行われた。こうした地域間の交流を通じて、将来、実際のビジネスに結び付くことが期待できそうだ。

先端技術で中国の環境市場に攻める日系企業

日本企業は早くから中国の環境ビジネスに参入しているが、いままで技術流出の懸念や、設備機械や技術が高価であったことなど様々な要因から、活発とは言えない状況だった。最近では、前述した政府支援などにより、環境ビジネス関連の対中投資案件が増え、特に高度な技術や新しい分野に関連する投資が多い。例えば、水ビジネスでは、旭化成ケミカルズは、世界最大規模の膜分離活性汚泥法(MBR)による排水処理設備を受注している。三菱電機は、北京市や蘇州市から、オゾンを発生させる水処理装置「オゾナイザ」を受注した。積水化学工業は、日本のプラスチックパイプメーカーとして初めて中国の水道管市場に進出し、耐久性や軽量性に優れる強化プラスチック複合管の販路を広げようとしている。丸紅は、中国の総合下水処理事業会社への出資で下水処理事業に参入すると発表した。

競争激しい市場だけに気を緩めない

中国の環境ビジネス市場は成長性が高いだけに競争も激しい。中国企業はもちろん、欧米企業や、韓国、香港などのアジア企業は、それぞれ得意の分野でもってこの市場を虎視眈々と狙っている。優れた技術だけでは市場競争に勝ち抜くとは限らない。知的所有権などのリスクに留意しながら、変化が大きい中国の市場動向に注視し、中国市場に合った技術や製品・設備を提供できる企業は成功する確率も高くなる。

株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員/李 粹蓉
(掲載日:2010年02月16日)


株式会社ニーズ キャピタルデザイン/主席研究員
李 粹蓉  り すいよう Ri Suiyo
1988年京都大学経済学部卒業。1990年野村総合研究所に入社、2004年野村證券に転籍、同金融経済研究所経済調査部シニアエコノミスト、2006年野村資本市場研究所主任研究員、2007年野村アセットマネジメント総合企画室シニアマネジャー。野村グループでは約18年間勤務、その間エコノミストとして、統計データから経済構造、政治、社会など幅広い角度から、中国経済および中国金融資本市場を鋭く調査・分析。中国の金融・経済情勢に精通。平成13年度財務省委嘱「中国研究会」委員。
 


この特集のバックナンバー

中国・アジア新興国特集 記事一覧

 

ページの先頭へ戻る


MoneyLifeインフォメーション

JVCA