|
|
トップ > 株式 > 中国・アジア新興国特集 > インド ニュースの裏側(インド紙社説) 中国・アジア新興国特集 [ インド ニュースの裏側(インド紙社説) ]ソーシャルブックマークに登録:
【第2回】来年の国勢調査、カースト集計は行うな──スズキの連結純利益の半分くらいを稼ぐインド子会社「マルチ・スズキ」の会長であるバルガバ氏は、日本からの経済ミッションに「カースト」について話してくれと要請され、意図的に「(インドでの)コスト(カット)」について 話したそうだ。インドでのビジネスでは、「コスト>カースト」の意識で臨まないと、 成功は覚束ない── インドでは来年2月、10年に一度の国勢調査が行われるが、政府の社会正義・地位向上省は、調査の項目にカーストを含めるべきだとの立場を取っている。優遇措置の留保制度の対象である「その他後進諸階級(OBCs)」の人口を調べ、そこに属するカーストごとの実情を再評価し、政府のOBCリストの見直しを視野に入れているようだ。 しかし、カーストごとの人口集計を伴う国勢調査は、カーストを再確認するだけでなく、カーストのシステムを持続させことにつながる。なので、そうした調査を実施する利点はない。カーストのない進歩的で平等な社会の確立という建国の父が唱えた目標に逆行するものでもある。 インド初代内相のパテル氏は、カーストごとの集計を行う国勢調査は1931年を最後に行わない方針を明確にし、その後の政府もこの方針を維持してきた。だが、78年に設置された第二次後進諸階級委員会(マンダル委員会)はOBCsを特定するためにカースト調査を行うよう勧告。 これに対して政府は、数千に及ぶカーストやサブカーストの一覧をつくるのは好ましくないだけでなく、不可能だとの理由で勧告を拒否した。最高裁は2006年、OBCsの人口情報を更新するよう政府に求めたが、政府はカーストごとの人口集計を改めて行わずとも、既存のデータを使えば情報の更新は可能との見解を示した。 カーストはインド社会に深く根ざしている。留保制度はカーストをより固定化し、カーストなき社会の実現を邪魔してきた。われわれはカーストや留保制度、カースト政治の先を見る時期に来ている。(1月8日付トリビューン紙社説) 株式会社インド・ビジネス・センター代表取締役社長 島田卓コメント
論調の意見に賛成だ。ただ、後進カーストに貧困層の多いのも事実だ。その一方で、裕福でありながら(したがって、その必要もないはずだが)留保制度という特別待遇でぬくぬくと世渡りをしている後進カーストに属する連中のいることもまた事実だ。 私がインド赴任の内示を受けた1990年秋口では、V.P.シン首相(当時)の打ち出した貧民救済策(留保枠の拡大)が引き金となり、反対する学生を中心に焼身自殺を含め60人以上が自殺するという報道もあり、悲惨な状況であった。結局V.P.シン首相は退陣、同年11月に故ラジブ・ガンディー首相の傀儡としてチャンドラ・シェカール政権が誕生している。学生の主張は「留保枠は逆差別」というものだ。例えば、大学の医学部に入るのに、一般学生は入学試験で80%以上の成績が必要なところ、留保枠に該当する学生は60%取れば合格といった類のものだ。公務員等でも同じで、平等(機会均等)の精神が、かえって逆差別になるという主張だ。これも一方的な面があり、必ずしも額面通りには扱えない。 したがって、論調の言っている「カーストや留保制度、カースト政治の先を見る」ことを具体的に示す必要がある。例えば、カーストによる留保枠は廃止するが、本当に困窮している家庭には政府(や州)が救済の手を差し伸べる。その結果、カーストの最上位バラモン階級でも生活保護を受けられる人たちも出るであろうし、最低のカーストでもまったく救済の対象にならない人たちも出てこよう。そうすることで、カーストといった悪しき慣習が少しずつでも無くなるものと思う。 (掲載日:2010年03月18日)
プロフィール : 島田 卓 Takashi Shimada 株式会社インド・ビジネス・センター 代表取締役社長 1948年埼玉県生まれ。1972年明治大学商学部卒業後、東京銀行ニューデリー支店次長を経て、1997年より現職。講演やTV、ラジオ等のメディア出演ほか、新聞、雑誌等への寄稿多数。著書に「日本を救うインド人」(講談社)、「スズキのインド戦略」(監訳/中経出版)、「超巨大市場インド」(ダイヤモンド社)など。 この特集のバックナンバー
|