中国・アジア新興国特集 [ ベトナムの素顔 成長力を読み解く  ]

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【第5回】

観光は「平和」へのパスポート ベトナム観光のこれから

観光とは、「国の光を観る」とする中国古典『易経』に由来する。ベトナムへの渡航者数は、ここ数年上昇の一途を辿り、日本との直行便も増便傾向にある。まさにベトナムの”光”を観んとする人たちが、増えていることの表れといえよう。
 また、観光は「見えざる輸出」 invisible export とも言われ、外貨獲得や経済発展の有望な手だてにもされる。国際機関日本アセアンセンター観光交流部の渕上奘慶さんに、観光側面におけるベトナムの成長性と今後をうかがった。(取材協力:日本アセアンセンター観光交流部)


観光は「平和」の証し 投資はあとからついてくる

観光は“平和産業”と、よく言われる。紛争や災害が多発するエリアに客足が遠のくのが、その大きな理由だ。しかし違う視点でみれば、観光需要の度合こそ、その国が平和であるかどうかのバロメーターになる。

近年におけるベトナムへの日本人旅行者数は、著しい伸びを示している(図1)。「観光は平和へのパスポート」と渕上さんが語るように、観光需要が高まる近ごろのベトナムでは、街を行き交う庶民の笑顔からも”平和”の二文字が読み取れる。 

図1 

ASEAN諸国と日本との観光の架け橋として22年ものキャリアをもつ渕上さんだが、「その国が持つイメージと観光需要には大きな因果関係がある」と語る。そして、観光によるイメージの向上により、「投資はあとからついてくる」とも。

こうした視点でアセアン各国を見渡すと、自国の観光プロモーションに大きな国費を割くタイやシンガポール、フィリピン、マレーシア、インドネシア(バリ島)などが、日本人に人気が高いのも頷(うなづ)ける(図2)。ところが日本人向けの観光誘致が、まだ始まったばかりのベトナムも、大きなシェアを占めているのがうかがえる。

図2 ASEAN諸国への日本人旅行者数(2007年)

そこで、ベトナムへの旅行者数を国籍別に見てみると、代表的な対越投資国(中国・韓国・米国・日本)が、シェアの半分を占めているのが読み取れる(図3)。まさに、観光と投資が密接な関係にあることを物語っているのである。

図3 ベトナムへの国別旅行者数(2007年)

ASEAN域内の観光格差是正にエリア・プロモーションを展開

そもそも「アセアン」ASEANとは、東南アジア諸国連合を指し、現在、10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)が加盟する。なかには、日本からの直行便がオフラインの国や地域もある。

これらの国々が、従来通り、国ごとに単独で観光プロモーションをする方策は、「格差が広がる懸念がある」と渕上さんは指摘する。複数の工場で一つの製品を造るように、旅行商品もまた、ツーリズム・プロダクツという概念でエリア(地域)単位のプロモーションが求められている。

そこで、ごく最近ではタイとCLMV(カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナムの頭文字)を一つのリージョンに、「メコンエリア」として旅行商品の開発が進んでいる。

ちなみに、ブルネイ・インドネシア・マレーシア・フィリピンの4カ国(東ASEAN成長地域)を、それぞれの頭文字をとって「ビンプーイアガ」 BIMP−EAGA(East ASEAN Growth Area)とくくり、その地域を「赤道アジア」と名づけて、各国政府観光機関や旅行会社と共同でプロダクツの開発が進められている。

これを渕上さんは、「多様性のなかの統一」と位置付ける。宗教や文化、言語、生活習慣がそれぞれ異なる国が持つ豊富な観光資源を、広域でとらえることで、さらなる魅力を与えることができる。

欧州への日本人旅行者がまだ少なかった時代、パッケージツアーの基本が「ロン・パリ・ローマ」(ロンドン・パリ・ローマの周遊型)であったように、ベトナムを含むメコンエリアもまた、観光におけるユニティ(統合)とダイバシティー(多様性)の時代を迎えようとしているのである。

図4 日本の二国間ODA供与相手国トップ10(2006年)

聞き手:千葉千枝子(掲載日:2010年03月11日)



プロフィール :千葉千枝子 Chieko Chiba
旅行作家。中央大学卒業後、富士銀行、シティバンクを経てJTB へ入社。96 年、有限会社を設立。旅と金融をテーマに、運輸・観光業全般の論評、執筆・講演活動を行う。著書に「JTB 旅をみがく現場力」(東洋経済新報社)など。今春より東京成徳短大で観光学講師に就任。
 


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