株式 [ 投資の極意 ]

- 株がインフレヘッジになることはお分かりのことと思います。しかし、必ずしも常にインフレヘッジになるとは限りません。株がインフレヘッジとして働くにはある条件が必要となるのです。それは緩やかなインフレに限るという条件です。急激なインフレには株価が対応できないのです。1973(昭和48)年の第1次オイルショック、1979(昭和54)年の第2次オイルショックでは、オイル価格が短期に数倍に値上がりし物価は急騰しました。それまで安価であった原油価格の上昇で、長期的には経済成長に石油価格という新たな制約条件が出てきて、経済成長率は鈍化しました。短期的には原材料価格の急騰から企業収益が圧迫されました。第1次オイルショックや第2次オイルショック直後はこの物価の急騰を嫌気して株式市場は調整局面を迎えました。株価には急激なインフレを嫌うという特性があるのです。

- 株式は緩やかなインフレが続く限りインフレヘッジになります。その理由の一つが価格の転嫁にあるのです。株式市場では、実質の利益ではなく名目利益で判断します。穏やかなインフレの場合、原材料価格などの上昇は、需給関係にもよりますが、ある程度インフレ分を価格に転嫁できるともいえます。価格の転嫁ができれば利益もその分上乗せされるのです。企業収益は値上げ分増加しますから株価も上昇し、これがインフレヘッジになるのです。
- ところがデフレの場合は、その反対のことが起こります。これが1989(平成元)年12月の「バブル経済」の崩壊後に起こりました。当初は地価の値下がりや金融機関の不良債権の問題でしたが、最終局面では物価の下落という「デフレ」の問題にまで発展しました。第4回で掲載した6大都市市街地価格の地価を見てください(第4回へ)。1990(平成2)年4月のピークの525.4から2004(平成16)年4月には67.2まで急落しています。高値から87%の下落で1975(昭和50)年の水準にまで下がってしまいました。この地価の急落が企業収益や財務内容に影響を与えないはずはありません。そこでデフレの影響を見てみましょう。
- デフレはまず企業収益を直撃します。売上は単価掛ける数量ですから、デフレの場合、売上単価の下落に見合った分、コストが削減できれば問題はないのですが、そうはいきません。売値を安くして売上を伸ばしたいと考え、皆が売値を引き下げ、売値の引き下げ競争が起こることになります。一方、コストは急には下がりません。販売単価の下落にコストの削減が追いつかないので収益は悪化します。
- デフレの影響は、収益の悪化にとどまりません。もっと大きな影響がバランス・シートに出るのです。企業のバランス・シートは、右側が資金の調達方法を、左側がその使い道を示しています。地価の下落によって資産の価値が目減りしてしまいますが、借金は変わりません。借りたものは返さなければなりませんが、土地の担保価値は下落していますから処分売りをしても大きな損失が出てしまいます。企業の資産内容の劣化のみならず貸した金が戻らない、借りた金が返せない、担保の土地の価格が暴落して担保価値が目減りした―などの問題が表面化しました。企業の資産内容の劣化を図示すると次のようになります。
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- 「6大都市市街地価格と日経平均を対比」のグラフを思い出してください(第4回へ)。6大都市市街地価格は株価の下落に1年ほど遅れて下げ始めました。戦後最長の不況になったのも地価の長期下落がその原因といえます。
- 掲載日:2007年6月20日
- 永野 満(ながの・みつる)
- 1948年、鎌倉市生まれ。一橋大経済学部卒。大和証券に入社し、アナリストを務めた後、ファンドマネージャーとしてアブダビ投資庁でオイルダラーを11年間運用する。現在は、経営、投資分析、年金などのコンサルティングを手掛けるサクセスナビ代表。
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