勉強する・投資する

 

かば子

株式 [ IPOトップインタビュー ]

ソーシャルブックマークに登録:

TOKYO AIM取引所の村木徹太郎社長に聞く

アジアのスピード感に対抗する「戦略」を提供する

東京証券取引所とロンドン証券取引所の共同出資会社でプロ投資家向けの証券市場「TOKYO AIM取引所」が開設されてから2年あまり、7月15日に創薬ベンチャーのメビオファームが第1号として上場する。取引所開設から上場第1号決定までの取り組み、今後の上場誘致の構想などについて村木徹太郎社長に聞いた。

TOKYO AIMが開所してから上場第1号が決定するまで2年を要した。


TOKYO AIM取引所
村木徹太郎社長

村木氏:

TOKYO AIMは2009年6月に免許を得て取引所としてスタートしたが、2008年の金融危機の影響が大きく、絶対数のIPO(新規株式公開)件数が激減した。国内取引所のIPOの件数は2000年以降では、2000年が最多で200社強、最近では2006年に188社が新規上場している。2000年から2007年の新興市場の新規上場銘柄数は年間平均で130−140社程度であり、この水準が日本のIPOの一般的な需要を得られる水準といわれている。

2008年9月のリーマン・ショックのあとは、2009年の新興市場の新規上場が13社、2010年は増えたとはいえ全体で22社。今年はこれを上回るとみられてスタートしたが、東日本大震災の影響による厳しい時期を経て、ここにきてようやく盛り返しが期待されているところだ。歴史的にみてIPO件数の低い水準の時期に取引所のスタートとなったと認識している。


取引所データ等をもとに暦年ベースで国内の取引所に新規上場した社数をQBRで集計して作成。
 

TOKYO AIMはプロの投資家を対象とした上場制度を基本としている。米国のモデルでいえば機関投資家向けの「144A」、英国であれば「AIM」のようなマーケットが日本にできることによって、例えば海外企業が英語による情報開示・海外の会計基準をもとに上場するなど新しいタイプの会社の上場や、新しい層の投資家がIPO市場に参入するといった、日本になかったものを創造して伸ばしていきたいと考えている。

上場審査を担う指定アドバイザーJ−Nomadは開所当時日系6社でスタートした。指定アドバイザーを担う証券会社にとっては、(1)自分で審査、(2)上場後のケア、(3)リテールに売れない、というTOKYO AIMのビジネスモデルに対応するため、たいへんな労力を要することも理解している。日系だけでなく外資系証券にぜひ参入してほしいと、例えば英国のAIMでアドバイザリー業務に実績を持つ外資系証券に日本進出を願っていたが、リーマン・ショックの影響を少なからず受け実現に至らなかった。ここ1年非日系のJ−Nomad候補への働きかけを続けてきたが、今回シンガポールに親会社を持つフィリップ証券が7番目のJ−Nomadに加わった。アジアのなかでビジネスを広げるにあたって日本が拠点のひとつとなり、Nomad業務を通じて引受や将来的に様々なアドバイザリー業務につながるとチャンスを見いだしていただいたと考えている。

創薬ベンチャーのメビオファームがAIM上場第1号となる。


村木氏:

海外の投資家を相手にし、海外のビジネスチャンスを更に拡大してゆこうとする企業が、ASEANの玄関口であるシンガポールに基盤を持つフィリップ証券をJ−Nomadとして上場第1号となることは、大いに意義があると感じている。

メビオファームは日本人社長で日本に研究施設を持つ日本のバイオベンチャーだが、医薬の治験は世界でもハードルが高い米食品医薬品局(FDA)に対して進めている。臨床試験で承認を受けた医薬品を世界で販売してゆくことも考慮して、世界の投資家に評価される会社、そういう投資家が参入しやすい市場としてAIMを上場先として選んでいただけた。プロ投資家向けのTOKYO AIM市場を使い、メビオファームが日本にいながらにして世界に向けていろいろなことを展開する戦略性とうまく合致したと考えている。

開所から2年間、上場ゼロが続いたが。

村木氏:

TOKYO AIMに上場したいと興味を示す会社は少なからずあった。監査証明が最近1年間で上場申請できるスピード感が企業にとって大きなメリットだが、ロンドン証券取引所のAIMとつながりがあるTOKYO AIMを通じて投資家を含めた外部とのリンケージが期待できること、プロ投資家が受け皿であるので上場時に資金調達をして一定期間を経過したのちに次の上場部を目指す、あるいは海外への重複上場を目指す展開をはかるのに適していること、株価が業績に連動して推移していくことが期待できることなどを指摘する声もあった。  

もちろん、上場予備群が150−200社単位であれば「こういう案件ならこちらの証券会社さんで」と可能性も広がるだろうが、そもそもIPO市場が厳しい中、リテール部門を組織として抱える証券会社が案件として進めることへのむずかしさがあった。

日本にプロの投資家はいないという声もあるが、そういうことばかり言っていてはなかなかプロの投資家が増えない。TOKYO AIMを通じて、こういった中小型株市場や海外企業に投資するプロ投資家の母数が増えて欲しいという願いがある。

上場を考える企業にとってのAIM市場の魅力は何か。

村木氏:

中長期的な投資スタンスのプロ投資家へのアクセスや国際性に加えて、上場準備の期間が本則市場に比べ短く、早く上場できることが企業にとって大きなメリットだ。内部統制報告書の提出義務がないことや四半期決算の必要がないことも企業の負担軽減につながる。内部統制報告や四半期決算の開示は、大企業であればコストをかけることもできるだろうが、小さな企業にとっては業務をこなす人員・時間・費用が必要で直接コストアップにつながる。社長が率先して飛び回るような企業にとっては、それらの制限がないことで負担が軽減され本業に集中することができる。未上場のままだと事業のデュー・デリジェンスにある程度の時間を要するが、上場すれば「市場価格」になるので、仮に買収や被買収といった「コーポレート・アクション」を起こす際にも、手続等が容易になる利点もある。

これからは上場社数を増やす実績づくりが大切になる。

村木氏:

第2号、第3号と上場企業が続けば、J−Nomadである証券会社がノウハウを蓄えることができる。新しく指定アドバイザーに加わりたいという相談につながったり、既存のJ−Nomadが新しい上場会社候補を連れてくるということにもつながるだろう。上場会社数が増えれば慎重だった日本の企業も前向きになり、発行体にとっても証券会社にとってもビジネスチャンスにつながるのではないか。

AIM上場の候補には、海外ですでに株式を公開している企業も念頭に置いている。日本で知名度を上げ業務展開したい、日本で投資をしたい、という企業にとってはTOKYO AIMに重複上場することは費用対効果の大きい手法となるだろう。

このほか、ガバナンスが整備されていれば親子上場もTOKYO AIMでは上場の可能性があるだろうし、オーナー系企業の株式公開、ファンド上場など、プロ投資家向けの市場だからこそ上場可能な案件があると考えている。

指定アドバイザー(J−Nomad)の層の広がりについては。

村木氏:

J−Nomadでは既存の日系6社の動きが今後進むことに期待しているし、日系の中堅証券が将来的に参加することを願っている。外資系で日本に拠点をもつ証券会社は引き続きターゲットであるし、これから日本の拠点を築く新規で参入してくる外資系も候補である。会計事務所はデュー・デリジェンスの専門家であるので、J−Nomadの可能性もあるし上場後の企業をフォローするパートナーとしてもぜひ加わって欲しい。沖縄や九州、北海道といった域内に根ざして、地場の産業や技術を成長させる地域企業の上場を促進する地域に特化したNomadを誕生させられないか、新しい提案にも取り組んでいる。

市場国際化に向けた現状認識と課題は何か?

村木氏:

メビオファームが海外に出てゆくステップとして、TOKYO AIMの上場第1号となったことは大変喜ばしい。従来の日本の上場制度では上場準備からかなりの時間を経過しなければ株式上場にたどり着けないが、それではスピード感のあるアジアの競争と同じ目線で「ガチンコの勝負」ができないと考えている。1997年から2000年前半にかけて金融危機に直面したアジアは、通貨危機で国際通貨基金(IMF)の支援のもと構造改革をすすめた韓国、タイ、インドネシアはもとより、支援を要請しなかったマレーシアも危機感をもってグローバル化を進めてきた。アジアの企業家には早くに英語教育を受け海外留学を経験し、自国の文化と世界標準の「ダブル・スタンダード」を備えた人材が多い。これらに対抗してゆくには「戦略」が必要だ。TOKYO AIMを上場のオプションのひとつとして利用してもらうことで、TOKYO AIMが企業の活躍できる場になると考えている。TOKYO AIMは取引所として過去の手法にとらわれることなく、その時点の「ベスト」を導入してゆきたい。

■外部リンク■
TOKYO AIM

取材・執筆:QUICK MoneyLife(掲載日:2011年07月15日)

この特集のバックナンバー

株式 記事一覧

 

ページの先頭へ戻る

MoneyLifeインフォメーション