FX・CFD [くりっく365インタビュー]

東京金融取引所 大房弘憲部長に聞く

アジア通貨の上場と取引所FXの未来

8月1日から外国為替証拠金取引(FX)におけるレバレッジの上限が25倍に引き下げられました。昨年8月に50倍の上限が設けられてから1年間の猶予期間を経て、いよいよレバレッジ規制は最終段階に入りました。そして、来年1月からはFX税制の一本化も予定されています。このようにFX市場を取り巻く環境が大きく変わる中、取引所FXの現状と今後の取り組みについて、「くりっく365」を上場している東京金融取引所営業部長の大房弘憲氏に話を聞きました。


レバレッジ規制によって、売買高の減少は避けられないと考えられますが。


東京金融取引所営業部
営業部長大房弘憲氏

大房氏:

昨年8月に50倍のレバレッジ規制が行われたのですが、この時、私共が上場する「くりっく365」の8月の取引数量は、7月対比で12.4%のマイナスとなりました。規制が行われる前、「くりっく365」のレバレッジは上限が100倍程度であり、店頭FX業者の多くは200〜400倍だったのですが、実際にそこまで高いレバレッジで取引している投資家は少なく、「くりっく365」の場合ですと平均して7〜8倍程度といったところです。

一方、店頭FX業者のなかには、50倍、100倍という非常に高いレバレッジで取引している投資家が結構いらっしゃったと聞いています。結果、店頭FX業者の場合、レバレッジ規制が行われた8月の取引数量は極端な例ですと、7月比で5〜6割という大幅な減少になったケースもあったようです。つまり、「くりっく365」の取引数量が12.4%のマイナスで済んだのは、ハイレバレッジ取引を行っている投資家が少なかったと考えることができます。

ドル/円が1ドル=100円の時、レバレッジが100倍だと、1万ドルの取引に必要な証拠金額は1万円で済みます。

ところが、レバレッジが50倍になると、必要証拠金の額は1万円から2万円に引き上げられます。さらに、レバレッジが25倍になると、必要証拠金の額は4万円になりますが、ここで注意しなければならないのは、必要証拠金の増加額です。

レバレッジが100倍から50倍になった時、必要証拠金は1万円増えただけでしたが、レバレッジが50倍から25倍になると、必要証拠金の額は2万円も増えることになるのです。このため、レバレッジ規制前と同数の建玉を維持するためには、従前の倍の証拠金が必要となるため注意が必要です。したがって、これを市場全体の観点から見た場合、全体の証拠金額が一定だとすると、保持できる建玉の数量は半分に減ってしまうことになります。勿論、レバレッジ規制が行われるときの相場環境にもよりますが、取引数量は瞬間風速では減少するる可能性があるというわけです。

ただ「くりっく365」の場合、その平均的なレバレッジは7〜8倍ですから、レバレッジが最高25倍になったとしても、取引数量そのものに大きな影響が及ぶことはないだろうと見ています。側面、口座数や証拠金がここ最近勢い付いて伸びているため、これらの要因がレバレッジ規制強化に伴い予想される売買高の減少を緩和することも期待しています。

FX取扱業者によって、かなり状況は変わるということですか?

大房氏:

そうです。店頭FX業者のなかには、40〜50%くらいのマイナスを見込んでいるところもあります。「くりっく365」のように、平均的なレバレッジが7〜8倍程度であれば、レバレッジが25倍になったとしても、それほど大きな影響は出ないと思うのですが、現状、20〜30倍という高めのレバレッジで取引している投資家が多い場合だと、25倍規制になることで、ポジションを落としたり、取引を減らさざるを得なくなるケースがあります。つまり、レバレッジ規制の影響は、そのFX会社がどのような投資家に支えられているのかによって、大きく変わってくるのではないでしょうか。

「くりっく365」は、この7月に上場6周年を迎えましたが、認知度はかなり高まってきています。一方この間FX市場には、さまざまな規制・ルールが設けられ、店頭FX業者の整理・淘汰も進みました。ひところに比べて、FX会社の数が大幅に減少したことからも、それが伺われます。

ただ、為替コストが安く、いつでも自由に決済できる自由度の高さを兼ね備えたFX取引は、外貨投資に興味を持っている投資家に対しても、大きな利便性を提供できる優れた商品です。その事実は、レバレッジ規制で揺らぐことはありませんし、FXのマーケット自体がシュリンクするようなことにはならないと見ていますし、またそうしてはならないと考えています。

震災による影響はありましたか?

大房氏:

震災のあった本年の3月、「くりっく365」の上場来最高の出来高を記録しました。そして、4月が3位、5月が5位ですから、投資家のFXに対する意欲は引き続き強いと考えられます。何よりも証拠金の入り方が、ここ最近右肩上がりで増えており、その上昇カーブが力強く立ってきています。従前は月平均20億〜30億円のペースで証拠金が増えているイメージでしたが、6月は78億円の増加、特に、預かり証拠金残高が1,000億円を超えてから増加ペースが加速し、2,000億円に達するまでが非常に速かったという印象を受けています。

それは震災後も続いており、5月は過去最高の増え方をしています。「くりっく365」に関していえば、震災の影響はほとんどなかったと考えられます。

「くりっく365」の取引参加者によって、サービスの違いはあるのですか?

大房氏:

現在、取引参加者は23社ありますが、それぞれに特徴を打ち出し、様々なキャンペーンなどで、しのぎをけずっています。具体的には、企業の知名度もそうですが、優れたシステム、投資家に分かりやすいキャンペーンを打っているところなどが、強みを持っています。

あるいは特徴という点でいえば、対面取引を重視している取引参加者も出てきており、非常に健闘しています。やはり23社も取引参加者が揃うと、それぞれの顔ぶれは多彩ですし、その選択肢の多さが、投資家にとっては魅力に映るのだと思います。


預かり証拠金残高の推移をみると、まさしく右肩上がりが続いています。成長の背景は?

大房氏:

確かに、「くりっく365」が上場されてから6年間、預かり証拠金の残高は右肩上がりで増加してきました。この動きはまだまだ続くと考えています。一番望ましいのは、常に市場を拡大させ新たな投資家が市場に入ってこられること。「くりっく365」取扱業者の競争だけが過熱してパイの食い合いが生じることになれば、手数料の引き下げ競争が激化してしまう恐れがあり、本質的な意味での市場の健全性が損なわれてしまう可能性が出てくるのです。

大事なことは、手数料の競争だけではなく、もっと別の付加価値を高めることによって、投資家により高い利便性を提供することだと考えています。振り返ってみますと、「くりっく365」はこの6年間の過程で、さまざまな進化と改良を続けてきました。

たとえば、「くりっく365」が上場した当初、提供している通貨数は4通貨ペアでしたし、両建ても出来ず、携帯電話などを使ったモバイルトレードもできませんでした。それが、今では23通貨ペアを取り扱うようになり、モバイルトレードも可能になりました。さらに、価格の公平性を増し流動性を厚くするため、マーケットメイカーも3社から6社に増やしました。その結果、競争原理がより一段と働いて、スプレッドの縮小にもつながりました。

こうした進化は、すべて投資家のニーズをくみ上げてきた結果でもあります。これまで数多く地方でもセミナーを行ってきました。その度に参加者の方々からアンケートを取り、どういうサービスを望んでいるのかを把握するように努めてきました。その結果が、通貨ペアの拡大や様々な商品性の改善に結びついています。

この進化はまだまだ止まりません。たとえば、投資家の皆様や取扱業者からよく上がってくるニーズの中には、アジア通貨の取り扱いをして欲しい、というものがありました。そこで、8月1日から、人民元/円、韓国ウォン/円、インドルピー/円という3つのアジア通貨ペアを上場しました。特に人民元/円の通貨ペアは、これまでごく一部の店頭FX業者が扱っているだけに過ぎませんでしたが、これを完全マーケットメイク方式で提供できるという点は、投資家にとって大いに安心感があるでしょうし、また大変魅力的でしょう。他の通貨ペアとは違って、24時間取引というわけにはいきませんが、いずれは24時間取引に近づいていく可能性もあります。

来年1月の取引分から、税制が一本化され、取引所FXと店頭FXの税制上の違いが無くなります。これは、取引所FXにとって、優位性のひとつを失うことになりませんか?

大房氏:

来年1月の取引分から店頭FXで取引して得られた利益に対する課税が、現在の総合課税から、20%の申告分離課税に移行します。つまり、取引所FXと同じになるわけですが、来年1月からのスタートということは、実際にそのメリットを実感できるのは、再来年2〜3月の確定申告分からということになります。

したがって、すぐに投資家の動きに変化が生じるとは思えませんが、平均的なレバレッジの違いからも分かるように、取引所FXと店頭FXとでは、やや投資家層が違う可能性があります。つまり、投資家が評価している、求めている部分が違うのです。

取引所FXの場合、投資家が評価してくださっているのは、取引所取引ならではの取引の安心感、価格の透明性や健全性、取引参加者の信頼性の高さ、そして投資家の証拠金を保全する信頼性の高い仕組みなどです。したがって、来年1月以降、税制の一本化が行われたからといって、すぐに店頭FXに乗り換える動きが広まるようなことにはならないと考えています。

今後、投資家の利便性を高めるために、どのような形で付加価値を高めていこうと考えていますか?

大房氏:

やるべきことはたくさんあります。8月1日からは法人(非個人)を対象にして、レバレッジを最大150倍まで高める制度をスタートさせますし、システムトレードへの対応も進めています。さらには取次制度といって、地方の証券会社などが取次という方法を使って、「くりっく365」を利用できるようにするための環境整備を行っています。今は国内の個人投資家だけが参加している「くりっく365」ですが、将来的には海外の投資家や例えば金融機関などが自己取引などで参加していただけるようになればと考えています。これにより、市場の流動性を厚くし、より価格の透明性を高めた市場に育て上げ、更なる市場の拡大を目指してゆきたいと考えています。


QUICK MoneyLife(掲載日:2011年08月01日)


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